紅屋楓

悲しく辛い思いが凍てつく心を溶かしていく
 読了いたしました。  同性間の親子というのは特に難しいのかもしれないなと感じたのが正直なところです。  ビョルンエステルネ同様に「いつか自分の店を持ちたい」と漏らしていた息子。  かつては同じ道を目指していながらも決裂し、長らく音信不通となっていた二人は、とうとう歩み寄ることが叶わなかった。  残酷だなと思いながらもどこか現実味を帯びているように感じました。 父と息子、そして父と娘。それぞれが親子間で飲み物の共有を楽しんでいたのかもしれないこと……  疎遠になりながらも、主人公が自身と息子の姿を、エイリーク父娘(おやこ)に重ねているところが切なく胸に迫ります。  アイスランドと北海道という寒い土地にもたらされる知らせが、身も心も凍てつかせて悲しくて仕方がありませんでした。  大掛かりな仕掛けでなく、しかし死は突然で容赦などないのだと思い知らされます。  いち読者に過ぎませんが、しっとりとした悲しみの中に突き落とされたような気がしました。  ともに同じ人を亡くした辛さ、悲しみ、孤独を抱える祖父と孫娘。  こんなにも辛いお話が短編で、どういった幕引きになるんだろう?と気がかりでしたが……  他に頼りがないとはいえ、初対面の祖父と暮らすと決めた、小さな女の子の決心たるや。  凛子ちゃんから歩み寄ったようなところが、ミソなのかもしれませんね。  悲しく辛い思いをともに抱えていることが、むしろ二人の凍てつく心を溶かしていくようで、ほのかな温かさがありました。  ビョルンエステルネと凛子ちゃんがぎこちないながらも寄り添って生きていってくれればいいなと思います。  ありがとうございました。
1件・1件
レビューありがとうございます😊 こんな丁寧なレビューを頂けて……本望です!! 残された父親ビョルンスティエルネと遺された娘の凛子。この2人に共感して頂ければ作者としてこんなに嬉しいことはありません。 作品リストにも入れて頂き、ありがとうございます😊 感想を貰うことがなかなか無かった為、本当に嬉しかったです。
1件

/1ページ

1件