さくら花菜

一字一句もらさずに読んでほしい作品
嫌だよ、タカセくん──。その、どこか可愛らしく、興味をそそるタイトル。そして、最初の1ページ。実はここまで読んだ時は、完全にラブコメだと思っていました。 「嫌だよ、タカセくん」と言うヒロイン、莉心の顔は、この時点ではからかうようにニヤニヤしているイメージでした。ところが。 物語は、ひたすらに莉心を見つめるタカセくんの視点で描かれています。 待宵くん自身が「自分(の作品)史上いちばん可愛い」と言っていただけあって、莉心という女性はとてつもなく可愛らしくて魅力的に描かれています。 でも、そこに本当に描かれているのは莉心の魅力ではなく、溢れるほどに切ない、タカセくんの想いなのです。 「嫌だよ、タカセくん」ああ、そういうことか、と。ラブコメなわけがない。ほんの小さな、でも痛いほどに切ないラブストーリー。究極のラブレターを読んだ気分です。 タイトルとストーリーの巧みさもさることながら、印象的なのは眩い描写。 読み終えた瞬間、わたし自身がまさに、ラスト一行の莉心でした。文字で読んだだけなのに、瞼に焼き付いて離れない、キラキラとこぼれ落ちるような光。 もともと少ない言葉で巧みに描写するのが待宵作品ですが、かつてここまで切なく美しい描写があったでしょうか?(いや、たくさんあった気もする笑) ところで、ラストがハッピーエンドかそうでないか。一見、読者に委ねているようなこの作品ですが。 私個人の意見としましては、この作品をきちんと読めば、そんなもの一択です。 まずタイトルも含め、最初から一字一句もらさずに読んでいただきたい。 この作品は緻密に計算された、非常に完成度の高い物語。ラストの妙に切ない描写に騙されず(笑)、莉心に余計な感情移入もせず、作者が描こうとしたものを、できるだけ正確に読み取ってほしいなあ、と。それができたとき、そのラストに腹が立つくらい感服しますよ笑 とりあえず。極力客観的にレビューというか感想を書かせていただいたんですけれども。 私の素直な気持ちを言えば、「この作品大好き♡」のひとことに尽きます! そんな物語を書いてくれた待宵くん、本当に本当にありがとう。お疲れ様でした。 次回は「莉心、寿司を食う」でよろしく。 あ、余談だけど、莉心ってなんとなく東京ラブストーリーのリカっぽいね。私ちゃんと観たことないけど、最近あらすじを知ったのだ笑
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