桜居かのん

(続き) 「おっ、今日のおかずは揚げ物が多いね!フライデー、なるほどフライの日、なんちゃって」 「600円です」 彼は私の言葉にうなだれると財布からお札を取り出しトレーに置いた。 が、それはお札ではなく、有名な遊園地のチケット。 「嫌いかな、こういうの」 急に真っ直ぐ見つめられて私は口を開けない。 「あ、遊園地が嫌なら水族館でも動物園でも!」 私が黙ってると彼が畳みかけてきた。 必死のその顔に私は息を吸って大きな声を出す。 「遅い!」 「ごめん!思ったより残業させられて」 「鈍い!」 「すみません!……何が?」 首を傾げた彼に私がうなだれる。 ずっと金曜日に部活も習い事も入れず私がここにいたと思ってたんだろう。 「ところでデートはどうでしょう?」 彼は600円をトレーの上に置き、私は視線をトレーから彼に向ける。 「オヤジギャグ言わないなら行ってあげても良いけど」 「えー割と面白いと思ったのに」 じろっと睨みつつ私はお金とチケットを受け取った。 「おばあちゃんがいたら、どうする気だったの?」 私の質問に彼は、 「ずっと前からこの時間は二人だけにしてってお願いしてたから大丈夫」  と、とても爽やかな笑顔を浮かべた。 もしかして私は知らないうちに彼の策略にはめられていたのだろうか。 「やっと金曜日以外に君と会える」 彼の笑顔に、私はとんでもない相手を好きになったのかもしれないと今更ながら気がつく。 私は苦笑いしながら妙にフライの詰まったお弁当を彼に差し出した。               END
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月曜日の巫女ならぬ、金曜日の売り子。桜井さんの作品の雰囲気、好きです。
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金曜日の売り子、なるほど! そのように言って頂き、とてもとても嬉しいです!ありがとうございます😭
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