紅屋楓

ほのぼのとハラハラの匙加減が絶妙です。
 読了いたしました。  終始作品の雰囲気が一貫しており、キャラクターもともにブレがなく、また一話ごとに章の区切りがあり、テンポよく読み進めることができました。  小説家のおじさんのもとで居候する渉、家主のおじさんと猫のムーの日常にして二人が同じ女の子に恋してしまうお話。  ほのぼのとした日々の営みに和みながらも恋敵となってしまった二人の行く末にハラハラしながらページをめくっておりました。ライバルだからといって渉とおじさんが嫌なところを覗かせることもなく安心する反面、おじさんに素直にメールの代筆を頼む渉が微笑ましくもあり、それを快諾するおじさんが切なくもあり……ああ、本当に成美ちゃんは最終的にどちらを選ぶんだろう? と。  特に水族館でのハコフグの場面は成美ちゃんのおじさんへのファン心もあり、おやおや……? と少し思ったり。ですが、ハコフグに似ているというおじさんが可愛らしく、そんなおじさんに大切にされていた亡き奥様が羨ましいばかりでした。文学散歩をしたいという成美ちゃんにさりげなく遊園地デートをアシストするおじさん、いいですね。渉のことを思うとさぞ肝が冷えたことでしょう。  最後に上田さんに掻き乱されるのか? とまたハラハラすると同時に、すべてを知っていた上で結婚した成美ちゃんにやっぱりと思いながらも素敵なら子だなぁとほんわかしました。  また小説家としておじさんが新作発表の場に出向いたり、成美ちゃんがおじさんのもとへ伺ったりなど、出版業界のお仕事を垣間見ることができるのも面白いです。  1ページごとに章が切り替わり場面転換が多い作品でしたが、気にならず読むことができるのは筆者である仁矢田さんの力量あってのことかと思います。  ありがとうございました。
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紅屋さん、丁寧で素敵なレビュ-をありがとうございます。とてもうれしいです。 改めて、私の方も、書かせていただきますね。もう少しお待ち下さい。
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