佐条

夏の深度に吸いこまれる
この『夏』には、吸引力がありました。 作品全体を覆うのは痛み。逃れられない苦しみと、それでも耐えるしかないという無力感です。しかし、そんなモノクロの閉塞と対比的に描かれるのは、途方もない深度の夏、夏、夏。 ひとつひとつの情景が簡潔ながらも確実にイメージを眼前に立ち上げて、読者を夏へと誘います。 狭苦しい教室と、開放的な夏。 残酷な現実から逃げ出したい。 序盤で生々しく描かれた息苦しさの中で、解放を望まずにはいられない。 水の中で息継ぎを望むように、読者がごく自然に物語の風景へと引きずり込まれる構造が見事です。 さらに、『電車の接近』というギミックがあることで、ページを進める事に緊張感がうなぎ登りに増していく点も素晴らしいです。 その他にも、読者を物語に巻き込む描写がたくさんあって、よく考えられた作品だと思いました。
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こんなにもたくさんの感想ほんとにありがとうございます!! 夏は色彩鮮やかな世界と光と影のモノクロ世界の二面性があると思ってるのでよく並べちゃいます。 とにかく突き抜けるような夏を描きたかったので、夏の色や温度を感じてくださっていれば嬉しいです!

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