吉野衣織

読み手の人智は超えてきます。
敬虔なクリスチャンの女子中学生「ますみ」と、その姉を慕う小学生の弟「かなた」が、自身の持つ魂の輝きゆえに様々な困難に見舞われ、立ち向かって行く物語。 悪魔との対話に、読み手の中にある道徳や善意の質をみっちり問うてきます。 たて続けに起こる不幸、「不自然だ」と切り捨てることなかれ、そう思わせられたことこそが、もう作者の掌の上です。その疑問は回収されるので、安心して読み進めてください。 そしてこれは高すぎる文章力であるが故の不幸でもあると思いますが、女性は前半を乗り越えられない方も多いのではないかなと思いました。 「悪魔」と「魂」の話を取り扱うため、性的に不快を覚えるシーンが重なります。読み進めていくと、その必要性は納得できるのですが、そこまで到達するには少しでも実体験をされた事のある方には、トラウマを刺激する試練になってしまう事は懸念されます。 それほど、文章が生々しい質量を以て迫って来るのです。 息を詰めて入り込んでしまう緊迫感、これこそがこの作品の醍醐味です。 私はペコメやスタンプで突っ込みや共感をベタベタ残す質ですが、それを許さないほど怒濤の展開が待ち受けています。ページを繰るのに忙しくなってしまうのです。 作者ご本人が作中の宗教に入信されているわけではないようです。 だからこそ、冷徹なまでに現実を切る手腕を、何を問われているのかを、楽しめる作品に仕上がっていると思います。
1件・1件
目を疑う程の身に余る高評価に恐縮するばかりです。 ろくに読書こしてこなかった奴の文章に迫力があるかどうかはわかりませんが、不快なシーンも乗り越えてみっちり読んで下さって本当に感謝しています。楽しんで頂けたようで幸いです。
1件

/1ページ

1件