「家族」になる物語
 二つの番外編もどきどき読ませていただきましたが、レビューは続編「めったにないこと」について。  いきなり、「え?」と驚かされました。そうだったの? 最初はちょっと戸惑いました。まさか、そんなことが。  でも、読了した後、このお話は、単なるハッピーエンドなのではなく、頼りないながらも(?)時を経たジルベールが本当に大人になっていく物語、そしてそれは、自分の父母(とくにお母さん)や双子の兄との大きな深い傷となっている確執を超えて、再び「家族」になること、そして、クラーレットとエシーと、自分の新しい「家族」をつくっていく物語なのだと思いました。  主人公のジルベールのみならず、一人一人の登場人物のすべてに作者である紅屋さんがとてつもない愛情をもってつくり上げている。一つ一つの表現が、以前にもまして洗練されている、いやそれ以上に、愛おしみをもって丁寧に丁寧に描かれているのがとても印象的です。  最後の数ページ、とくにエシーがクラーレットに母親であることを告げるシーンは、胸が締め付けられるようでした。でも、彼女はきっと受け止めてくれる。そういう確信も抱かせるシーンです。  狂おしいほどのジルベールとエシーの恋愛が、やがてクラーレットという存在によって、より昇華された「家族」として結実していく。どこか聖なるものさえ感じさせられました。第一作の見事な続編です。そして、非常に完成度の高い作品です。  私自身もほっとすることができました。どうもありがとうございました。
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