こにし桂奈

衝撃的な展開の連続。引き込まれずにはいられない。
物語の舞台は都会の大型マンション。そこには、両親と子供の家族、一人身の大学生、事務所兼自宅にしている経営者、犬を飼っている管理人など、様々な形態の家庭が集い、それぞれの生活を語っていくオムニバスのように話が広がり進んでいきます。 中盤までは主人公の人生を紐解きながら、複雑な養育環境や兄の話や変わった住民たちとの交流を中心に展開していきますが、後半へ進むにつれて奇妙な違和感が物語を支配してくるので、読んでいるこちらは神経がぞわぞわしていきます。 最後にこれがただの群像劇ではなかったと知らされるわけですが、「これはしてやられた」と、読者は必ず騙されたことに大満足するでしょう。 仲良く近所付き合いを行いながらも、どこかよそよそしい人間関係。一見無意味のような住民たちの動き。 全てが計算された作者の罠だったのです。 騙されているのに楽しいのは、作者さんの筆力が確かだからです。 最後まで読まないと味わえないこの爽快感。ぜひ他の方にも知って欲しいと思います。
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