りかりー

いつも応援ありがとうございます。 お礼にミニ話を送ります(*´∇`*) 『鬼呼びの花嫁』夜叉の恋前編 「今年も紅葉がきれい」 庭のもみじを眺めて、りっちは太い幹と枝の間に誰かが立っていることに気づいた。 「なぜ、おまえは鬼の面をつけている?」 「……亡くなった母から外してはいけないと言われたから。……あの、あなたは?」 歳は二十歳過ぎだろうか? 銀の髪をひとつに結わえた男は、鬼の面をつけているわたしを面白そうに見下ろしていた。 「俺か?俺の名は夜叉。この近くに住む鬼だ。鬼の面をつけている女がいると噂に聞いておもしろそうだから見に来た」 噂通りだったな。と夜叉は笑った。 目の前にいる男が、鬼……? 姿は人に見えるけれど瞳が不思議な光彩をしてる。青から銀に近い色。 「おまえは俺がこわくないのか?俺は人を喰らう鬼だと名乗ってるんだが?」 「……怖がる?」 「怖がれば喰らってやろうかと思っていたんだがな」 そう言って夜叉はまた笑った。 「おまえは変わってるな。気に入った。またここへ来る。その時は俺の遊び相手にでもなれ」 ひとしきり笑うと夜叉と名乗った男は姿を消した。 数日後、湯浴みを終え部屋に戻ると夜叉が酒を片手にくつろいでいた。 「夜叉……?」 「約束通り、俺の遊び相手にしてやろうと思って来てやったぞ。俺の相手ができることを光栄に思うがいい。俺は上手いから、すぐによがるだろ」 「?……夜叉が、美味しい?よがる?」 ぽかんとした夜叉はすぐに腹を抱えて笑った。 「そのウマイじゃない。そうか、おまえには通う男はいないか。確かに鬼の面をつけている女など気味が悪かろう」 その通りだった。 父は鬼の面をつけるわたしを嫌い山里の屋敷へと移した。 ここにいてくれる乳母や使用人たちは何も言わないけれど。 「……俺も鬼だからな。何もせずとも忌み嫌われる」 おまえと同じだと、夜叉は庭の紅葉を見上げ呟いた。 それから時々、夜叉はここを訪れるようになった─── 2枚目につづく
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