@りかりー:つづき 「体……弱いくせに、走るなよ」 月に一度は熱を出しては寝込んでた。 忙しい両親の代わりに俺が面倒を見ていた。 いつからだろう? クラスメートにいじめられても俺がそばについていてやらなくてもよくなったのは。 遠い過去を思ってると、 ぐらりとよろけ、アイツが膝をついた。 その顔色は真っ青だ。 「アイツ……」 屋上から階段を駆け降りて校庭へ走ると、その人垣の中から奪うと抱き上げた。 「鷹先輩!?」 「えっ!うそっ!」 呼吸が浅く速い。白い顔が苦しげに歪む。 貧血か…… 医務室に運び込むとベッドに寝かせジャージの前を寛げた。 瞬間、首からするりと掛けられてた小さな袋が落ちた。 幼い頃から下げていた御守りの中身がはみ出て見えた。 ……オモチャの指輪? その時、医務室のドアが開いた。 立ってたのはコイツのいとこ。俺の天敵だ。 僕が看るから帰っていいと、追い出そうとして俺の手にある御守りに気づいた。 「それは……」 奪うように取られた御守り。 その中身のことを知っていたのか。 天敵。 俺から平気でコイツを奪ってく。 「鷹、おまえにりっちは渡さないからな!」 それは堂々とした宣戦布告だった─── 後編へ(次回、10月後半のミニ話へ)
りっち
後編も楽しみに待ってます!
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@りかりー:りかりーと申します。 いつも応援ありがとうございます。 お礼にミニ話を送ります。 よかったら読んでやってくださいませ(*´∇`*) 『10年目の約束』 グズでノロマ。 話しかければ震え、顔を上げさせれば泣き出しそうな表情をしたヤツがどうして気になるのかわからなかった。 幼馴染みのりっちは、そばにいてもいなくても俺の気に障った。 「なんでだよ。リスみたいで可愛いじゃん。鷹、おまえが怖いから誰も手を出さねえけど、彼女にしたいって思ってるヤツ結構いるんだぜ」 「可愛い?どこがだ?アイツを彼女にしたいってそんな物好きいるのか?」 わからねえな。 見てるとイライラするだけだが。 「おまえほどになると、遊び過ぎてて美意識狂ってんだろ」 手のひらをひらひらと振る悪友は呆れ顔だ。 誘われれば致したりする。据え膳食わねばなんとやらだ。男なら当然のことだろ? 「それを節操なしっつうんだよ」 それから、悪友はふと気づいたように俺の後ろを指差した。 振り返ると後ろには困ったような表情をしたアイツが立っていた。 「鷹ちゃん、あのね、ジャージ忘れちゃって……」 形のいい胸が似合う制服。短いスカートからはほっそりとした脚が覗いてた。 「そうなん?俺のでよければ貸そうか?」 「お、おい、やめとけって。鷹がっ」 話を聞いた外野がジャージを渡そうとしたのを悪友が慌てて止めた。 「貸す、だと?」 男の匂いのするもの。 「あ、いや、やっぱりやめとく」 顔色を悪くしたヤツはそそくさと教室を出ていった。 「どうしよ、鷹ちゃん、ジャージ……」 その瞳が潤む。 机の背に掛けていたジャージを放り投げると表情がばあっと明るくなった。 「ありがとう、鷹ちゃん!」 ジャージを抱き締めると去っていく後ろ姿を見送る。その先には女友だちが待っていた。 「怖いねえ。独占欲の強い男は。」 独占欲?そんなものねえよ。 あるのは切っても切れない腐れ縁だけだ。 次の授業、サボった屋上からジャージ姿のアイツを見下ろしていた。 ブカブカのジャージの裾を捲り上げ息を切らせて校庭を走っている。 「体……弱いくせに走るなよ」 2枚目につづく
りっち
ありがとうございます! 夕飯作りながら携帯見ていたら通知が…。 和が家のカレーは圧力鍋に任せて私は読ませてもらいまぁす🥰
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@りかりー:りっちさん、こんにちは! いつもたくさんの応援ありがとうございます。 お礼にミニ話をプレゼント!(*´∇`*) 『ドS上司に飼われました!』 「おまえの席はここだ。何か文句でもあるか?」 ないです。ないです。全然ないです。 ありますって言ったら、何をされるかわからないもの。 「たとえ、文句があったとしても変えるつもりはないがな」 口の端を上げて意地悪く嗤うのは、わたしが配属された先のイケメン課長、冴木徹。 すべての女子社員が狙っているほどの大物。 わたし(りっち)は入社試験の時に、遅刻しそうになって慌てて飛び乗ったエレベーターで、上司を押し倒すというヘマをやらかした。 それも押し倒しただけじゃなく、くちびるが触れてしまったという……(悲しいかな、わたしのファーストキスの相手でもある) わたしの机。 なんたって冴木課長の真ん前に置かれた。 みんなの机は課長から少し離れたところにあって、左右に5人ずつ並んでるのに。 入社試験の面接官だったと、面接室で顔を合わせた時には絶望した。 絶対に落ちると思った。 それなのに、なぜか受かって今はここにいる。 ある意味、この状況も絶望だけど。 「おまえには俺のサポートとしてついてもらう。反論は許さない」 「あの、でもそれは」まずいんじゃ…… 「反論するなと言ったろう。早速だが出かける。ついてこい」 社内の研修期間を無事に終えて、配属された当日。 席に座らないうちに冴木課長が上着を持った。 今すぐなの?うそ! 「何してる。早く来い!」 みんなの憧れの冴木課長。 その課長がオロオロするわたしにこめかみに青筋を立てた。 「は、はいっ!」 慌てて冴木課長の背中をついていく。 と、ヒールが滑って、 「きゃあっ」 振り返った冴木課長の胸に飛び込んでしまった。 「おまえは、俺に何か恨みでもあるのか💢」 怒れる冴木課長のシャツには、わたしの淡い色のくちびるの跡がしっかりとついていた。 怖い冴木課長。怯えるわたし。 正社員1日目のわたしは、早くも冴木課長の怒りを買ってしまった。 「おまえ、いい度胸してるな」 目の据わった冴木課長がいた───
りっち
ドS❤…いいですねぇ。 でも、実際いたら、自分なら恋に発展しないだろうなぁ(笑)
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@りかりー:りっちさん、いつもたくさんの応援ありがとう! 感謝を込めてミニ話をプレゼント🎵 ひと夏の恋 「見て!すっごい良い天気!!」 わたしは高校時代からの友だちと3人で夏の海へとやって来た。 目の前はどこまでも続く青い海! そこから5分ほど歩くと大人気のコテージがある。 「こんな素敵なコテージに泊まれるなんて最高!!」 なんて、コテージを見上げて喜んだのもつかの間。 予約してたと思ったコテージには泊まれず、夏休み真っ最中で海辺のホテルの部屋も取れず、わたしたち3人は途方に暮れた。 黄昏時、荷物を抱えたまま海の家で撃沈…… 「ごめんね……とても楽しみにしてたのに、わたしがちゃんと予約取れたか確かめなかったから……」 ふたりに申し訳なくて涙が零れた。 そんなわたしたちを見かねて、海の家のオーナーの月野さんが声を掛けてくれた。 「今、夏休みで人手が足りてないんだ。もし良かったら少し手伝ってくれないかな?手伝ってくれたら、海の家の宿泊が空いてるし提供するよ」 それに……ほら、こんなむさ苦しいのばっかりだと男性客来ないだろ? そばにいた男性をふたりを指差し小声で言った。 わたしたちは月野さんの言葉に甘えて、海の家を手伝う代わりに、コテージに泊まらせてもらうことになったのだった。 コテージには月野さんと、その従業員の男性がふたり。 わたしたちは4日間ほどお世話になりますと挨拶をした。 部屋は綺麗で、月野さんも働いているふたりも優しくて、海の家でのお手伝いはとても楽しかった。 「手伝ってくれてありがとな。さっき、花火買ってきたんだけど、よかったら」 「花火大好きなの。嬉しい! 」 2日もすると、男性ふたりと友だちは良い雰囲気に。 笑顔の絶えない月野さんは、 「あのふたりに、俺が出張る必要なさそうだな」 庭でバーベキューをしながら、目を細めてふたりを見てた。 わたしはと言えば……隣に並んでる月野さんが気になって、ドキドキしてた。 わたしたちが困っていた時に手を差し伸べてくれた、その手をわたしは忘れない。 さりげない優しさに惹かれてく。 あと1日の滞在というところで、海の家に大人気アイドルの遠峯梓が月野さんに駆け寄ると抱きついた! 「会いたくて来ちゃった!」 月野さんに満面の笑みで抱きついたアイドルに、わたしは持っていたトレイを取り落とした。 うそっ!?
りっち
ありがとうございます! 毎日暑くて体調崩していませんか? 早くコロナが収束して海に行きたいです。だから、お話の中だけでも夏らしいことが嬉しいです😄
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@りかりー:つづき、2枚目です。 七夕。 それは、一年に一度だけ、愛しい者と会える日。 遥か天の川を渡って、たった一晩かぎりの逢瀬。 それでもいい。 君の元気な姿をひとめ見ることができるのなら。 あの時言えなかった言葉を伝えることができるのなら。 たったひと言。君に。 七夕まつりの夜。 あの時と同じ浴衣に袖を通して、 あの時と同じように出店を抜けて、 あの時と同じように高台へ登って、 あの時と同じように打ち上がる花火を見た。 花火はもうすぐ終わる。 そして、俺の恋も終わる。 静かに目を伏せる。 打ち上がる花火の音が、最後の恋を散らしていく。 カラン 不意に、微かな下駄の音がして振り向いた。 「よかった。流星くんがいてくれた。……っ!?」 鮮やかな光の色に照らされた牡丹柄の浴衣。 君の面影を濃く残す大人になった笑顔。 振り返ると同時に駆け出して、この腕に抱き締めてた。 もう二度と会えないと思った。 もう生きていないかもしれないと苦しかった。 「約束したよね。5年後に会おうって」 ああ、言った。言ったさ。 病気でこの街を去らなきゃいけないって知って、どの街へ行ってもいい、君に生きてて欲しいと思ったんだ。 「わたし、頑張ったんだよ。流星くんが七夕まつりで会おうって言ってくれたから」 華奢で細い体。 たくさんたくさん頑張ったんだろう。 抱き締めきれなくて、もっともっと抱き締めたくて腕に力をいれた。 今夜、この一瞬でいい。 君に会えたキセキ。七夕の奇跡。 「流星くんは……いつも温かかったね。うわべじゃなくて心が。こんな風に」 背中に腕が回されて、君が目を潤ませ頬を擦り寄せた。 あの時と同じ優しい香りがする。 片時だって忘れられなかった。 子供の恋だと笑われようとも。 君に会えた。 5年前、あの夜に言えなかった想いをすべて伝えるよ。 ずっとずっと好きだったんだ。 「もうどこにも行かせない……りっち、二度と離さない」 最後の大輪の花 夜空の星たちがふたりを照らしていた─── 【完】
りっち
ありがとうございます! 七夕らしい物語でキュンとしました
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@りかりー:3枚目 彼女と一也と見合せる? 聞いた瞬間に頭が真っ白になった。 今、彼女がはにかみながらも楽しそうに話しているのが一也だ。 紹介? そんなことをしたら付き合うに決まってる。 俺の紹介なら、奏の仲間ならば断れるわけがない。それくらいわかる。 「なあ、帯刀、どう思う?」 奏が笑いながらも本気顔で問う。 「……いいんじゃないか?」 「ふーん、わかった。ならこっちで段取りはする」 戸惑う俺に、奏はやけにつまらなそうに呟いた。 その一週間後。 彼女は眉を下げて心細そうに俺を見上げた。 一也と初めての公認デートだ。 彼女の頭を撫でてやりながら声を掛けた。 「泊まるなら、連絡くらい入れろよ」 「と、泊まりだなんて、そんな」 彼女は慌てて首と両手を振り、迎えに来た一也の車に乗ると出掛けて行った。 日が暮れる頃になって、奏が酒を片手にふらりと訪ねて来た。 「あの子、今頃は一也と食事かな?」 「さあな」 「海に行くと言ってたからな。眺めのいいホテルを予約してやった」 「……は?」 「当然だろう?付き合ってるなら」 なんてこった!泊まりだと!? 酔いなんて吹っ飛んだ。 立ち上がるとテーブルにあった車のKeyを掴んだ。 「間に合えばいいけどな。ほらよ」 奏がスマホを投げて寄越した。 わけもわからず、いても立ってもいられない。 車を飛ばし海へと向かう。スマホ画面にはホテルの予約が記されていた。 気づいたんだ。 失えないと。おまえを誰にもとられたくない。誰にも触れられたくないと! 「りっちっ!!」 正面に車をなげて駆け込み、最上階で食事をしていた彼女の腕を掴んで連れ出した。 「帯刀、さん?」 無我夢中で抱き締めた。 「やっと気づいたんだ。俺はおまえを最初から。俺を助けてくれたあの日から」 ───好きだったんだ 【完】 「一也、おまえをダシにして悪かったな」 こうなることは初めからわかってたと、奏は酒杯を傾けながらひとり笑った。
りっち
はぁ(♡ω♡ ) 奏さんにはバレバレだったんですねwww
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@りかりー:毎日応援ありがとうございます。 お礼にミニ話をプレゼント! 『若恋』初恋 降りしきる雨の中、 「帯刀、おまえいつか女にササレるぞ」 俺は、大神奏から呆れ顔で言われてたことを思い出していた。 遊びに遊んだ、自業自得か。 「それにしても、くそっ、いってぇな」 腹を押さえて歩き続け、痛みが増してすぐそばの塀に寄りかかった。 「あのっ、大丈夫ですか?」 降ってくる声に目を開けると、開いた傘を俺に差し出すエプロン姿の若い女がいた。 目の前はオンボロアパート。そこの住人らしかった。 「少し休めば大丈夫だ」 「あの、でも、それ、ケガして」 彼女が俺の腹を見て顔を青くした。 人を呼ばれても困る。 立ち上がり歩きだそうとしたが、体が言うことを効かない。めまいまでしてきた。 「わっ、どうしよ。あのっ!」 慌てる彼女を前に、俺は意識を失った。 ※※※ 「気がついた、よかった!」 消毒薬の匂い……ここはどこだ? やけに古くさい部屋で俺は目を覚ました。 どうやら、傷の手当てをしてくれたらしい。 腹に触ると包帯が巻かれていた。 「悪いな、迷惑かけて」 「いいの、困った時はお互い様だから」 彼女は柔らかく笑った。 あいつらは帰らない俺を心配してるだろうが、ここには呼びつけたくなかった。 彼女の言うように、少し動けるようになったら出ていこう。 そう思って目を閉じた。 毎日、傷口を消毒し換えられる包帯。 俺に何があったのか聞かない。それも心地よくて甘えていた。 あいつらには無事だとだけ返し、しばらく放っておくように指示を出した。 ある日、アパートの前でガラの悪い声が聞こえ、俺が戸口で怯える彼女の隣に立つと、男は姿を消した。 「悪い男にでも引っ掛かったか?」 「そうじゃないの……だけど」 言葉を濁す彼女には何か事情があるんだろう。 そして、2週間後。 俺は迎えに来たあいつらの前で、 「困ったことがあったら俺を頼ってこい」 と、胸元から外したものを握らせた。 「これ……」 「俺は大神組の帯刀。……助けてくれた恩は忘れない」 彼女は寂しそうにくちびるを噛んだ。 けれども、すぐに顔を上げて笑顔を見せてくれた。とても優しい笑顔だった。 そして、一年後。 俺を助けてくれた彼女が、龍神会の『競り』にかけられることを知った。 「どうして、りっちが…」 2枚目につづく
りっち
朝から仕事終わりの楽しみにしてました。 ありがとうございます(✿ ♡‿♡)
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@りかりー:※※※ 朝顔が庭に咲いて、日増しに陽射しが強くなる。 御簾を上げていても部屋の中は暑い。 こうなれば十二単なんて着ていられなくて、誰も見ていないことをいいことに、スポッと抜け出して寛いでいる。 「っ!?おまえっ!?」 声に振り返ると、狐月が目玉を落としそうなほど目を見開いていた。 はっと気づいて慌てて後ろにいた誰かの目を両手で塞いだ。 「み、見るなっ!!おまえも衣を整えろっ!!」 仕方ないからまた重しを羽織る。 暑いんだけどなー。 衣を整えると、狐月は連れてきた誰かの目を隠すのをやめて、ふたりでその場に座った。 狐月が連れてきたのは弟さんの八重樫だった。 「八重樫、さま?」 「兄に無理を言ってついてきてしまいました。姫は、……なんというか、自由ですね」 前にも庭に降りたのを見られている。 これで、恥ずかしいとされる場面を二度も見られたことになる。 八重樫は眩しいものをみるようにわたしを見て微笑んでいる。 こんなはしたないわたしに眉根を寄せるでもなく優しい笑顔を向ける。 「そういえば前に八重樫に会ったと話をしていたことがあったな」 狐月が思い出したように言った。 「うん、前に庭に降りてたら見られてたの。七尾には雷を落とされたよ。庭を歩いてたくらい見逃してくれてもいいのに……」 「庭に降りて?そりゃ、あの生真面目な七尾には怒られるわな」 狐月は渋い顔をした。 「舞い散る桜の中にいる姫君はとても美しかったですよ。桜の化身かと思いました」 八重樫、すごいお世辞…… ただボーッと桜を見上げてただけだったのに。 「この腕に、拐ってしまいたいほどでした」 八重樫は目を細めてわたしを見た。 狐月と似ている顔。それよりも雰囲気が優しい。 「今日は、姫が好きだと伺ったお菓子が手に入ったのでお持ちしたのです」 「お菓子?」 「ええ、水菓子です」 わあ、嬉しい! 自然に顔が緩んだ。 八重樫の隣で狐月の機嫌がなぜか悪くなる。が、甘いものには勝てない。 美味しいと三人で食べていると、七尾がお伝えしたいことがあるとやって来た。 「帝よりのお言葉です。『東宮妃候補、二の宮妃候補として、姫は、明日、参内するように』と」 突然告げられ驚いた。 目の前の狐月も八重樫も口から水菓子をぽとりと落とした。 は? 何がどうなってるのー!?
りっち
面白くなりそうですね(・∀・)ニヤ
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届いてまぁす! ありがとうございます。 今日は偏頭痛が酷すぎて、落ちていたのところだったので嬉しかったです❤
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@りかりー:いつも応援ありがとうございます。 『狐の妃候補にされました!』1 「高校卒業後の進路かあ。はぁ……どうしよう」 わたしは進路用紙を手に、何度もため息をついた。 親代わりの叔父さん叔母さんには、両親が亡くなってからお世話になりっぱなしだった。大学の学費まで負担を掛けたくない。 叔父さん叔母さんのことだから、『大学は出なさい』って言うに決まってる。 だけど……わたし知ってるんだ。 叔父さんと叔母さんの事業がうまくいってないこと。 高校卒業後は働いて、せめて恩返しが出来たらいいなって思ってるんだけど。 そんなことを考えながら歩いてたら、ふと足が止まった。 足下に何かが転がってる。 キラッと光る何か。 しゃがんで手に取ると、それは綺麗な琥珀色の宝石がついた指輪だった。 誰かが落としたのかな? 周りを見ても誰もいない。 拾って指輪を見ていたら、突然、指輪から強烈な琥珀色の光が弾けて、眩しくて目が開けていられない! くらっ 目眩がして座り込む。 光が徐々に萎むように消えた。 『なんだ?突然。おまえは何者だ?』 低くて険のある声が聞こえた。 声は下から聞こえ、向くと、目玉が落ちそうになった。 そこには頭の上に獣耳を生やした青年がいたからだ。 服はなんて言うんだろう? 平安時代のような直衣?狩衣? その後ろからはふさふさとしたたくさんの尻尾が揺れてて。 わたしはその人を下敷きにするように座ってた。 『どうやってここに入った?この結界の中には誰も入れないはずだが?』 は?結界?ここどこ? 地面に座り込んだはずだったのに、どこかのお屋敷の中にいた。 「答えぬなら答えられるようにしてみせようか」 視界がぐるりと反転した。 押し倒されたと気づいた時にはもう両手首が押さえつけられていた。 そこまでされてやっと事態が飲み込めてきた。と、同時に顔が強張った。 震えてくる。 頭に獣耳、尻尾がたくさん揺れて…… 人間じゃない、それなのに人間の言葉をしゃべってる。 怖い。押し倒されて何をされるのか、怖い、ここ、どこ?悪い夢でも見てるの? 『おい?どうした?……は?おいっ!?』 頭の中がぐるぐるして目眩が酷くなる。 「う、うえっ……」 『うわっ!?よせっ!!』 獣耳、尻尾の青年の慌てた声を聞きながら、わたしの頭の限界を超えて口から魂が出た。 何がどうなってるの……?
りっち
ありがとうございます! 続きも楽しみにしてます。
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@りかりー:2枚目 夜、眠る時は鬼の面を枕元に置いている。 寝入ってすぐに部屋に誰かが入って来た気配を感じて目を覚ました。 「誰……?」 薄明かりの中で銀の瞳がわたしを見ていた。 その視線に気づいて慌てて鬼の面を被った。 「顔を隠すな」 夜叉の指がわたしの頬に触れた。 「俺は素顔のおまえを見ていたい」 夜叉はそう言って鬼の面を外した。 夜叉に素顔をみられて顔が熱くなる。 そして、わたしは鬼の面をつけるのをやめた。 それから、半月ほど経った夜。 ガサッ 庭の方から物音がして、 「夜叉……?」 夜叉が遊びに来たのかと思って声を掛けた。 夜叉は昼も夜も関係なく遊びに来るからきっとそうだと思って……けれど。 バキバキッ 目の前で雨戸が大きな何かの爪で引き裂かれて、太い腕が戸を突き破った。 「きゃあっ」 「ウマソウなニオイがスル。クイタイ……」 赤い目をして耳まで裂けた口。 その口からはよだれが滴っている。 頭に角が二本ある大きな体の鬼だった。 「オマエ、クイタイ」 鋭い爪が伸びて喰われそうになった時、 「夜叉っ!!」 思わず叫んでた。 同じ喰われるなら夜叉がいい。他の鬼なんてイヤ! 夜叉はひとりぼっちのわたしと話をしてくれた。一緒に庭の花や木を眺め、時には屋敷から連れ出しては遊びに連れていってくれた。 わたしに笑うことを教えてくれた鬼。そうやって笑ってくれたらそれでいいと言ってくれた鬼。 「オニヨビをクラエバ、オレはモットツヨクナレル」 鬼の爪の先が髪に触れた。その時。 ザシュッ 目の前に伸びた鬼の腕が吹っ飛んだ。 腕のもがれた鬼がのたうち回って床に転がった。 「誰が俺のものに触れていいと言った!この女は俺の獲物だぞ!」 青みがかった銀の瞳が怒りに染まってる。 「ヒッ、タ、タスケテくれ」 助けを乞う鬼の首が跳んだ。 鬼の体は黒い霧になるとそのまま霧散した。 「……夜叉」 「怖かったな……遅くなった」 もう少しで体を引き千切られ喰われそうだった。震えが止まらない。 夜叉の腕が優しくて涙が溢れてくる。 夜叉は人ではない。 だけどそれでもいいと思った。 夜叉は震えが止まるまでずっと腕の中に居させてくれた。 その優しさが今のわたしのすべてだった─── 3枚目へつづく
りっち
おはようございます(^.^) 3枚目は遅くなりそうですか? 続きが気になりますぅ😆
@りかりー:いつも応援ありがとうございます。 お礼にミニ話を送ります(*´∇`*) 『鬼呼びの花嫁』夜叉の恋前編 「今年も紅葉がきれい」 庭のもみじを眺めて、りっちは太い幹と枝の間に誰かが立っていることに気づいた。 「なぜ、おまえは鬼の面をつけている?」 「……亡くなった母から外してはいけないと言われたから。……あの、あなたは?」 歳は二十歳過ぎだろうか? 銀の髪をひとつに結わえた男は、鬼の面をつけているわたしを面白そうに見下ろしていた。 「俺か?俺の名は夜叉。この近くに住む鬼だ。鬼の面をつけている女がいると噂に聞いておもしろそうだから見に来た」 噂通りだったな。と夜叉は笑った。 目の前にいる男が、鬼……? 姿は人に見えるけれど瞳が不思議な光彩をしてる。青から銀に近い色。 「おまえは俺がこわくないのか?俺は人を喰らう鬼だと名乗ってるんだが?」 「……怖がる?」 「怖がれば喰らってやろうかと思っていたんだがな」 そう言って夜叉はまた笑った。 「おまえは変わってるな。気に入った。またここへ来る。その時は俺の遊び相手にでもなれ」 ひとしきり笑うと夜叉と名乗った男は姿を消した。 数日後、湯浴みを終え部屋に戻ると夜叉が酒を片手にくつろいでいた。 「夜叉……?」 「約束通り、俺の遊び相手にしてやろうと思って来てやったぞ。俺の相手ができることを光栄に思うがいい。俺は上手いから、すぐによがるだろ」 「?……夜叉が、美味しい?よがる?」 ぽかんとした夜叉はすぐに腹を抱えて笑った。 「そのウマイじゃない。そうか、おまえには通う男はいないか。確かに鬼の面をつけている女など気味が悪かろう」 その通りだった。 父は鬼の面をつけるわたしを嫌い山里の屋敷へと移した。 ここにいてくれる乳母や使用人たちは何も言わないけれど。 「……俺も鬼だからな。何もせずとも忌み嫌われる」 おまえと同じだと、夜叉は庭の紅葉を見上げ呟いた。 それから時々、夜叉はここを訪れるようになった─── 2枚目につづく
りっち
おはようございます。 ありがとございます。
@りかりー:続き2 「知って、たのか」 銀の狼は瞬きする間に傷だらけのお兄ちゃんの姿になった。 力が抜けてくわたしを抱き締め返す。 「こんなバケモノだぞ、俺は」 「それでもいい……姿が変わっても」 目が霞んでく。 大好きなお兄ちゃんをもっと見ていたいのに。 「よせ、もう喋るな!すぐに手当てしてやる!約束しただろう。おまえが16歳になったら嫁にすると。今夜がその日だ!」 欲しくてたまらなかった想いをもらって嬉しくて涙が溢れた。 「うん。……わたし、お兄ちゃんのお嫁さんに、なる」 だから、 「……芝くん、お願い。お兄ちゃんを傷つけないで」 芝くんは殺気をなくして呆然とわたしを見下ろしていた。 「こんなはずじゃ、なかった。俺はただ」 人を守ろうとした。 わかってる。きっとそれが正義。 「ううん、いいの」 お兄ちゃんは人を喰らう恐ろしい妖しじゃないってわかってもらえたそれだけでいい。 微笑むと芝くんがハッとして、 「すぐ治癒の術をっ!」 お兄ちゃんの隣で跪いた。 「なっ!?術が効かないっ。そんな!」 「俺の力をやる!」 地に沈みそうなほど重かった体が、ふわふわと浮き上がる感覚がして目を開けた。 「わたしは……?」 芝くんが深く息を吐いた隣で、お兄ちゃんがわたしを掻き抱いた。 「……もういい」 芝、くん? 「人間を襲わない、喰らわないなら、調伏も必要ない。……傷を負わせて悪かった。ごめん」 肩越しに振り返り苦く笑うと、背を向けて芝くんは部屋を出ていった。 わたしはお兄ちゃんの頬の傷に触れた。 わたしを守ろうとして体にもたくさんその痕が残ってる。 お兄ちゃんは大丈夫だと言ってわたしの手を取るとくちづけた。 「帰ろう、俺たちの家に」 「うん」 銀の狼の姿になったその背に乗って、芝くんの屋敷を後にした。 その5年後。 「うわあ、なんだよこれ!可愛いすぎ!!」 去年生まれたケモ耳の子が芝くんに抱き抱えられてすりすりされてる。 あれから芝くんとは仲良くなってお互いの家を行き来してる。 「将来、俺の嫁にもらう!」 「誰が嫁にやるかよ。絶対にや・ら・な・い」 お兄ちゃんは芝くんの腕から我が子を抱き取った。 こうしてみんなで笑い合えることが幸せで、ずっと続いていくことを心から願った─── 完
りっち
ケモ耳の赤ちゃん…可愛いんだろうなぁ💕 今月もありがとございます‼️
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@りかりー:続き そう言って、起き上がると高ちゃんを引き剥がしてわたしを引き寄せた。 いつも前髪と眼鏡で隠していた顔がすぐ目の前にある。 幼い頃から変わらない香りが伝えてくれる。 記憶の奥底にずっとあった香りを、石段から落ちた祭りの夜にはっきりと思い出したことも。 このまま失ってしまうかもしれないところまできて思い知った。 みんなとの関係が壊れてしまったとしても失いたくないのは、 ───征太郎 あなただと。 「もう我慢しない。たとえ高弘にだってこいつはやれない」 きつく抱き締められて征太郎のシャツを震える手で握った。 「やっと起きたと思ったら、いきなり告りやがって。……初めからわかってたんだよ。征太郎の気持ちは」 高ちゃんは小さなため息を吐いた。 「何年幼なじみやってると思ってるんだ?ふたりが想い合っていることぐらい気づいてたさ。だけどいつまで経っても進展しない。……そうしてるうち、俺の、俺たちの気持ちだけでもわかれよって、な」 わたしは征太郎ばかり見てて高ちゃんの気持ちにもみんなの気持ちにも気づけなかった。 「高ちゃん……」 「そんな表情すんな。ちゃんとフラれて今度こそさっぱりした。だからって幼なじみの絆が消えるなんて思うなよ。俺たちは死ぬまで離れねえからな」 そう言って、高ちゃんは背中を向けて病室から出ていった。 「……高弘の言ってたそれって、俺のことを好きだってこと?」 「ちが、」 ううん、違わない。 もう後悔したくない。失ってしまうと凍えた時に素直になろうと誓ったから。 その想いを込めて、目を閉じた。 少し身動ぎした征太郎が息を飲んだ気配がして、やがてくちびるに熱いものが触れ角度を変えて甘く息をとめた。 「……俺は、ずっとおまえが幸せになれるんなら高弘に託せるって思ってた。だけど違った。夢でも高弘の腕の中にいたおまえを見た時、その宣言を聞いた時、ぶちギレた」 抱き締められる腕に力がこもる。 苦しいほどの強さに小さく頷いた。 「……わたしの好きなのは、征太郎だけだよ」 そう告げた瞬間に、目の前が反転してベッドに押し倒されてた。 「俺はもう我慢しないって、さっき言ったよ」 征太郎は顔を熱くしたわたしを見て、 「やめてって言っても、やめてやらないからな」 楽しそうに嬉しそうに笑ったのだった。 完
りっち
ありがとうございます‼️ 毎日暑いですが、お互いに体調に気を付けましょうね🎵 お盆は2日ほど出勤ですが、後の休みはクーラーの聞いた部屋でゆっくり読み返して過ごそうと思ってまぁす😆
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@りかりー:『白虎と過保護な幼なじみ』の別バージョンです(*´∀`) 「りっち、ちゃんとベッドに入ってろ。熱が高いんだからな」 幼なじみの慶ちゃんは、わたしを抱き上げてシーツの中に押し込んだ。 「ただの風邪なのに」 「そのただの風邪でよく寝込んでるのは誰だよ。俺がいないと倒れてるだろうが」 慶ちゃんは過保護すぎる。 隣の家に住んでるわたしを妹のように可愛がって、熱でも出すとこの有り様。 「暖かくして寝てろ。おやすみ」 頭をポンポンとすると帰ってく。 ある日、わたしは道で踞っていた白い縞模様の犬を連れ帰って手当てした。 「これ、犬なんかじゃないぞ。たぶん」 慶ちゃんは名前をつけた芝虎(縞模様が虎に似てた)の首根っこをつまみ上げた。 それからしばらくした学校帰り道。 後ろから羽交い締めにされ無理やりに草木の中に引き摺りこまれた。 「や、助けてっ……むぐっ」 押さえつけられたわたしを、 ガルルル 大きな白いものが跳んできて目の前の男をひと噛みして助けてくれた。 「俺が助けに来なかったらヤられてたぞ」 驚くわたしの前で大きくなった芝虎はどうみても人間の青年の姿に変わってく。 月に照らされた姿は芝虎と同じ…… 「見てるだけなのはやめた」 獣の眼差しに見据えられ、わたしの意識はそこで途切れた─── ※※※ 「ウソ……だろ?」 目が覚めた時、慶ちゃんが部屋のドアの前で、こぼれるばかりに目を見開いていた。 「おまえっ!何をした!?」 慶ちゃんは駆け寄ると芝虎からわたしを引き剥がして後ろに庇った。 慶ちゃんに青年の素性を話すと不機嫌な顔をされた。 「芝虎、くっつきすぎだ、離れろよ」 「やだね。こいつは俺のだ」 芝虎と慶ちゃんはわたしを挟んで言い合いしてる。 慶ちゃん、もしかしてわたしのこと……? 「ああ、好きだよ。好きに決まってるだろ。ずっと前から」 耳を赤くする慶ちゃんの思いがけない告白に胸の中が熱くなる。わたしだけが片思いだって思ってたのに。 「誰が好きでもない女の世話を焼くんだよ」 慶ちゃんが芝虎からわたしを奪い取り鼻を鳴らした。 大好きな慶ちゃん。いつだってわたしの特別だった。 「わたしも、す」 好きと言いかけて、くちびるは慶ちゃんのそれに塞がれた。 「いつか、おまえの大事なものもらうからな」 完
りっち
ありがとうございます💕 どちらも良くて悩みます…(^_^;) 幼なじみラブも好きだし、ファンタジーラブ(?)も好きだし…。 りかりーさん、私の好きなお話わかりすぎてますね(笑)
@りかりー:いつも応援ありがとう! お礼にミニ話をプレゼントφ(゜゜)ノ゜ 『白虎と過保護な幼なじみ』 「りっち、ちゃんとベッドに入ってろ。熱が高いんだから」 幼なじみの慶ちゃんはわたしを抱き上げてシーツの中に押しこんだ。 「慶ちゃんは過保護だよね、ただの風邪なのに」 「いいから寝ろ」 慶ちゃんは過保護すぎる。 「ちゃんと暖かくして寝てろよ。おやすみ」 頭をポンポンとすると帰ってった。 ある日、道で弱ってた犬を拾って家に連れ帰って手当てした。 「これ、犬なんかじゃないぞ。たぶん」 慶ちゃんは名前をつけた芝虎(縞模様が虎に似てた)の首根っこをつまみ上げた。 そうして、一緒に過ごして。 学校からの帰り道歩いていたら無理やりに草木の中に引き摺りこまれた。 「や、助けてっ……むぐっ」 押さえつけられたわたしを、ガルルル 大きな白いものが跳んできて目の前の男をひと噛みして助けてくれた。 みると、大きな白いものは芝虎とそっくりで……? 「俺が助けに来なかったらヤられてたぞ。わかってんのかよ」 驚くわたしの前で大きくなった芝虎はどうみても人間の青年の姿に変わってく。 月に照らされた姿は、短い黒髪に青い瞳。芝虎と同じ…… 「俺はもう我慢しない。見守ってるだけなのもやめた。他の男のものになど絶対させないからな。覚えとけ」 くらりとする眼差しに見据えられ、わたしの意識は途切れた─── 「ウソ……だろ?」 隣の家の慶ちゃんが部屋のドアの前で、こぼれるばかりに目を見開いていた。 「慶一郎、おまえこいつが好きだよな。だが、やらん。こいつは俺のものだ」 芝虎は当たり前のように言って、わたしの頬を舐めた。 「いいか、俺はこいつと毎日一緒に寝てる仲なんだ。邪魔するな」 「それはおまえが小さな犬だったから抱いて寝てただけだろ。芝虎、離れろよっ」 白虎から変化して人間の姿になってはふたりでわたしを挟んで言い合いしてる。 慶ちゃんはもしかしてわたしのこと……? 「ああ、好きだよ。好きに決まってるだろ。ずっとまえから」 思いがけない告白に驚いた……けれど、わたしは。 「さわるな、俺の女に。慶一郎の匂いがつく」 そう言って触れられたところを芝虎が舐める それだけで顔が熱くなってくる。 「絶対に逃がさない。死ぬまでおまえは俺のものだからな」 完
りっち
ありがとうございます💕 今、仕事の休憩でスマホ開いたら🎵 疲れが吹き飛びましたぁ😆
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そうなんですよねぇ。 外ではくしゃみ(*`゚Д´)(っ*`з´)っ・:∴すると視線が飛んできます( ノД`)…
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@りかりー:りっちさん、こんばんは! いつもたくさんの応援ありがとう! お礼にミニ話をプレゼント(* ̄∇ ̄*) ちなみにわたしは風邪が長引き、撃沈してます(笑) 『オレ様のシモベ』 オレが話しかけても震えてるだけのふみ。 それなのに去年引っ越してきたハーフのジョニーには笑ってた。 ヤキモチ? そんなんじゃない。このオレがそんなことあるわけない。 そんなある日、ジョニーがふみの頬にキスをして青い瞳が優しく微笑んでた。 ふみの指にクローバーで作ったものがはめられそうになって、思わず途中で遮ってた。 子供心にそれだけはさせてなるものかとそう思った。 「ジョニーはもうすぐアメリカに帰るんだぞ。おまえはおじさん、おばさんがいないアメリカに行けるのか?」 「ア、アメリカ……?」 ふみがポロポロと涙をこぼして泣き出した。 ジョニーがアメリカに帰るのを知らなかったらしい。 「ねえ、ふみ。泣かないで。アメリカに帰っても大きくなったら迎えに来るから。約束する」 「……やくそく?」 泣きべそのふみがしゃくりあげた。 ジョニーはふみの頭を優しく撫でた。 「10年なんてあっという間だよ、きっと」 同じ年なのにオレよりも大人びたジョニー。 大きな会社を継ぐために、日本に勉強しに来てた。 「……ホ、ホントに、きてくれる?」 「ああ、迎えに来るよ。ふみは僕にとって特別な女の子なんだから」 ジョニーの言葉にふみが小さく頷いた。 「ねえ、ふみ。その時は、僕と一緒にアメリカに行こう」 ジョニーはそう言った一ヶ月後に帰って行った。 その後、ふみは毎日泣いていた。 「ふみ、これをやる。だから泣くな」 「オ、ルゴール……?」 それはオレが大切にしてたオルゴール。 ふみが顔を上げてオレを見た。 「ジョニーの他にもいい男はいるだろが。おまえの目の前に」 ふみの顔が固まったかと思うとはにかみに変わった。 その後、ある日を境にふみはジョニーのことで泣かなくなった。 おばさんに聞いたら、「心が忘れてしまうことがあるんですって」と、話していた。 ふみ。 オレの小さなふみ。 ジョニーを忘れたふみに、オレだけを見て欲しかった。 あれから10年。 ふみはずっとオレだけのシモベだった。 「ふみ、迎えにきたよ」 金髪に青い瞳のジョニーが現れるその時までは───
りっち
ありがとうございます‼️ 風邪はやく良くなるといいですね。 私は花粉症でマスクが無くて大変です。
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@りかりー:『オレ様のシモベ』ふたりきりの夜 2枚目 「ふみ……」 零ちゃんの胸もドクンと音がした。 零ちゃんのキレイな顔が近づいてきて、 くちびるが触れそうになった。 「……どうせ抱きつかれるなら、胸の大きい女がいい」 「ご、ごめんなさい」 零ちゃんがわたしに優しいわけがなかった。 慌てて離れようとしたわたしの腕を零ちゃんが引いた。 「まあ、今夜は夜食の礼も含めて抱きつかせておいてやる。こうしてりゃ暖かいしな。……なんでそんな表情してんだよ。まさかオレ様がおまえにキスするってか?ありえないだろ?」 零ちゃんはわたしの頬をむぎゅっとつまんで引っ張った。 「いいから、寝ろ」 そう言うと、無理やりわたしを腕の中に押し込んだ。 零ちゃんの胸の音がする。 零ちゃんの香りに包まれて安心する。 包み込んでくれるぬくもりに、まるでいつもより優しくされているようで…… すうすう。 嵐が遠ざかって行く中、いつの間にか優しく深い眠りに落ちていった。 ※※※ オレはあどけない寝顔のふみを包み込んで、そばにあったシーツを胸まで引き寄せた。 安心しきって頬を寄せるふみに、お手上げだと片手で顔を覆った。 「もう少しで、理性がぶっ飛ぶとこだった。……今夜は眠れそうにねえな」 甘い寝息に愛しさが募り続ける。 艶のある髪をすくうと、そっとくちびるを寄せた─── ふたりきりの夜
りっち
ありがとうございます😁 ほんとはふみ大好きな零ちゃんの態度にニヤニヤしちゃいました😆 電車のなかとかじゃなくて布団の中で良かった(笑) たまに電車移動中に読んでしまってにやけてるのに焦るときあります。 loveなお話好きは大人しくお家で読みますね‼️
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全然OKです😆 りかりーさんだからハッピーエンドかなぁ?と思いながら読んでいたら、(あら、いつもと違うわ。でも有り‼️)と。 今日は次男の14歳の誕生日で、私も二人のママ14年目のプレゼント(*^^*)と勝手に嬉しかったです。
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@りかりー:りっちさん、いつも応援ありがとうございます。お礼にミニ話をプレゼント! 『若恋』蒼銀の恋~銀~ 焼け落ちて崩れていく邸を見上げながら、 「どうか、……真由、あいつと幸せに」 俺は、やっと、そう思えたんだ─── 人間にはわからない僅かな鉄錆びの臭い。 臭いを辿ると、窓際でぼんやりと外を眺めている女生徒がいた。 「……今の問題を、橘 」 「公式を当てはめて。次、花水木」 授業終了の鐘が鳴り、HRが終わっても、この教室の窓から迎えの車が見えても、それでも立ち上がらない。 俯いていた彼女はやがて帰って行った。 自分をこんな目にあわせる者がいる家へと。 ※※※ 月が丸くなる夜。 狼の姿になり、建物の屋根を駆け抜け、宙を跳んで古い屋敷の庭に降りた。 「おまえはどうして儂の言うことを聞けないのだっ!」 聞こえてくるのは鈍い音と呻き声。 漂ってくるのは鉄錆びの臭い。 「アレと同じ眼で儂を見るなっ!」 発狂したように叫ぶのは彼女の父。 逃げた妻の代わりに娘を打ち据える。 俺は狼の姿で彼女に会う。 痛々しい傷をさらし、声も出さずに泣く彼女のそばに寄り添う。 「……オオカミさん。このくらい平気よ。お父さんはわたしを思ってくれてるから叱るんだもん。……心配してくれてありがとう」 彼女は狼の俺にいつもそう言う。 いつか、この地獄の日々が終わる日がくると信じて。 ※※※ 彼女が学園を休んだ。 こんなことは一度もなかった。 そして、その次の日も彼女の姿は教室になかった。 彼女の部屋へと降りると、服は裂け、まぶたは目が開かないほど腫れ上がった彼女がいた。 「わたし、……お父さんの本当の娘じゃ、ないんだって」 ああ、知ってた。 彼女はまるであの男に似ていない。 「だから……わたしのこと憎いんだって。……もう、こんなの耐えられないっ!オオカミさんっ、お願い、わたしをここから連れ出して!」 泣いたことのない瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。 彼女がどれだけ苦しんだか知っている。 俺はずっと彼女を見ていた。 狼の姿の俺にも怖れず、負った傷を手当てしてくれた優しい娘。 彼女がいなかったら、俺は生きてはいなかっただろう。 初めて彼女は俺に助けを求めた。 「ああ、もちろん拐ってくよ。りっち、おまえを苦しめるすべてのものから守るためにな」 蒼銀の恋~銀~
りっち
ありがとうございます‼️ 今週は子供が修学旅行でいなかったので仕事が休みの日と夜は自分時間がたくさん合ったので若恋シリーズ読み直していました😆
@水嶋 つばき:本当はもっとサボる気でした✨ メンションに負けたw もう!分かったから!って感じで 始まりました『蜜夜婚遊戯』 0時に設定公開して12時間経ち 閲覧400、本棚250…あれ、計算合わないwけど まずまずのスタートを切ることができました。 これも皆様のお陰ですわ❤️ ありがとうございます 愛してるぜみんな とりあえず、本棚2,000目指そう。うん。 がんばりまっす。 恋愛ものを書くと 『隣…』の閲覧数が増えるという 謎の現象も健在ですがw これ、なんでだろうな。不思議w まぁ、もうちょいサボりたかった理由として 12月という繁忙期だからでw 更新も停止すると思うからなのだ。 そこは、みんなは分かっているだろうけどな。 皆様のご理解とドM具合に深く感謝✨ クリスマス前後、そして…30日辺りからかな? もう、やっべーの。今年。 なので、スタンバイ云々してると 書いてる暇もなくなる 寝る暇もなくなる…カオス状態 てなわけで マジで予定がつかないため 更新停止は勘弁してな😢 おお、それから "つぶやき"を見てくださっている皆様に ちょっとお得な話をしましょう。 スターポチポチ、頑張ってた方がいいよ?← では、今までとはちょっと違う 水嶋ワールドへ ご案内いたしましょう☺️ そんじゃ、よいお年を!←早いw
りっち
はじめまして😄 中学まで鹿児島で過ごし、今は埼玉在住なのでちょっとだけ親近感わいてます😁 隣の…を久しぶりに読みにいかせてもらいました😆 新作は完結を待ってから一気読みさせてください‼️ つばきさんのお話を電車で読んで1度失敗(?)したので今は家でしか読めず…。 息子に冷たい目で見られながら笑いをこらえながら読んでます😁 鹿児島も寒い日は寒いから気を付けてください‼️ 楽しみにしてます😁
@りかりー:りっちさん、こんにちは。 いつも応援ありがとうございます。 寒くなったので体調管理して風邪をひかないように…… 『若恋』真剣勝負 りおさんが昨夜から熱を出して、部屋で休んでいる。 若から留守を預かって、さっき様子を見に来た時には、顔が赤く軽く咳き込む程度だった。 「りおさん、具合はどうですか?」 ドアをノックして入って足が止まった。 ベッドの上にいたはずのりおさんの姿がない。 「……りお、さん?」 持ってきた飲み物と粥やフルーツをテーブルに置いて、辺りを見回した。 「ふにゃぁーい」 返事をした方を見ると、顔を真っ赤にしたりおさんがふらふらと歩いてた。 「危ないっ!」 よろけてテーブルにぶつかりそうになった体を支えて腕に抱き上げた。 その体は燃えてしまいそうなほど熱かった。 「すごい熱です。ちゃんと寝てないと……」 ベッドへと寝かせて汗で額に張り付いてた髪を払うと、その手をりおさんの手に包まれた。 「……榊さんの手、冷たくて、気持ちいい」 「りおさんが熱いんです……」 りおさんの熱で潤んだ瞳と目が合った。 「……冷たいものでも飲みますか?」 心臓が壊れそうにドクドク鳴る。 弱って細く吐いた吐息が触れて抱き締めたくなる。 「りおさん……」 りおさんを大切にしてる若の姿が頭に浮かぶ。 触れたらいけないとわかってるのに。 離さなければいけないとわかってるのに。 触れていたい……もっと…… りおさんの頬をそっと撫でた。 「……? 榊、さん?」 「どうぞ、わたしの手でよいならいくらでも……」 ほんの数分触れて、りおさんがくたりと眠りに落ちてく。 その寝顔を眺め上掛けをかけ直し立ち上がった。 「くちびるを奪うのかと思ったが」 ばっと振り向くと、若が壁に背をもたれさせ腕を組んで立っていた。 「……若」 「薬を飲ませてやらないと。口移しでかまわないぞ、榊」 熱が高すぎる。 すぐにでも薬を飲ませたい、けれど。 「……できません」 「なら、俺がやる」 若は薬を口に含み白湯をあおると、りおさんのくちびるを割ると流し込んだ。 ゆっくりと振り返る若の鋭い眼差しではっきりと知った。 いつかは若と決着をつけなければならないことに。それが今だということも。 「若、今夜、真剣勝負をお願いします」 【完】
りっち
ありがとうございます😁 さっそく読ませていただきましたぁ😆 今日は風邪からの気管支炎で吸引してきました😣💦⤵️ 寒くなってきたのでりかりーさんも気を付けてくださいね‼️
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@りかりー:こんにちは! 毎日応援ありがとうございます! お礼に以前の作品だけどプレゼント(*´∀`) 『オレ様のシモベ』中編 告白されて頭の中がパニックで、逃げるように家に帰ってきた。 心臓がバクバクしてる。零ちゃんの夜食を作っててもお皿を割っちゃって欠けた皿で指を切るほど動揺してて… 「ふみ、アイツ…何?同じ医学部の佐和山」 もしかして窓から見てたの? 「あ…うん、今日用事あって出掛けた先で…偶然…送ってくれて」 不機嫌に見える零ちゃんはオムライスとサラダとスープを不味いと言って、わたしの腕を引っ張って壁に押し付けた。 「おまえはあんなのが趣味なわけだ?」 「そんな、言い方、し、失礼だよ…佐和山さんいい人で」 零ちゃんの眉が上がった。 「んじゃ、アイツと付き合えば?」 そう告げると、ガリッ、いきなりくちびるに噛みついた。 「これで解放してやる」 目の前から零ちゃんが消えて、くちびるに噛みつかれた痛みと血の味が残った。 零ちゃんが…もうわたしなんかいらないって… 目覚まし時計の代わりも、昼寝枕も掃除係も料理作りも、もういらないって… そんな――― ウソだと思って次の日、零ちゃんを起こしに行ったら、もう起きて玄関から出ていこうとしてた。 「何しに来たんだ」 突き放されて追いかけたくても足が動かない。 零ちゃんの背中を追えなかった。 数日が過ぎ。 講義の合間に佐和山さんが声を掛けてくれた。 「なんだか元気…ないね。どうしたの?」 やっぱりいい人だ。 白衣着てて零ちゃんと同じでも同じじゃない… 涙目になったわたしのそばにずっといてくれた。 その優しさが今のわたしには救いに思えた――― 「ふみ、あの御曹司と付き合いはじめたって噂になってるけどホントなの?ホントだったらすごいよ、玉の輿じゃない♪」 御曹司? 「ほら、合コンでふみと一緒にいた佐和山さんだよ。病院の跡取り息子なんだって」 そう…なんだ… だからお医者さんになるために医学部へ… え?わたしと付き合ってるって噂になってるの? そんなんじゃないのに… 「違うの?」 「…ちが、」 違うよと言おうとした時、 「プロポーズしたんだ。親にも紹介するつもりだよ」 佐和山さんの信じられない一言に振り向いた途端、後ろにいた零ちゃんと目があった。 うそ!!!
りっち
ありがとうございます。 エブリスタが新しくなってまだまだ使いこなせなくて、応援の仕方がよくわからないのですが、変わらず作品は楽しみにしてます‼️ 令和も作品楽しみにしています(^O^)
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