水谷遥

詩的で素敵です。
 以前も(シリーズではない)短編を読ませて頂きましたが、長編の猛々しさと打って変わり、短編は幻想的なストーリーになるのがりふるさんの一面ですね。  書き方としても詩的であり、主人公のボンヤリと思考する様にリアリティがありました。会話はいつも通りのりふる様調なのですが、詩的な地の文とはっきりとした会話のコントラストが、生と死を彷彿とさせるフォルムに仕上がり、吸い込まれる緊張感がありました。  こうしたディテールも素晴らしかったのですが、特筆すべきは「死に際の人間視点」で書ききった点にあります。  「死に際人間視点」は、誰もが一度は思い立った事があるはずですが、おそらくまともに書けなかったはずです。    作家様がどの様な人生を送ってきたのかが、一目でバレてしまいます。作者の性格も露わになります。よって、主人公視点で死を直視する書き方を(三人称で語るなど)回避される作家さんが大多数かと思われます。  生死の境を一人称で書ききるとなると、確固たる死生観と人生論を持っていなければ、まずまともな作品になりません。  これを堂々たる筆圧、一縷のブレもなく書ききれるのは正にりふる様ならではであり、この力強さが誰にも真似できない最大の特徴ですね。  個人的な趣向ですが、詩的な文章になると途端に可愛くなり、会話とのメリハリが強調され、立体感が出ていて好きです。  テーマとしては文学で最も深く、誰もが思慮できる広大な内容で、壮大奥行を持つ物語でした。
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