水谷遥

禍々しい世界観に一票
 凄く好きな作風でした。プロフィールに「10代の頃から温めてきたプロットを、自分の中に秘めたままではしねない!」とあり、その文章と内容が非常にマッチしていました。  読書中に妙な違和感があり、構成も文章もしっかりしているのに、シーンのバランスが偏っているように感じました。これは悪い意味ではなく、内容的には王道ストーリーのはずですが、独特のテンポで、その原因は見せたいシーンがはっきりと分かりすぎるからかもしれません。  この違和感を解消したのが先の「十代から……」のコメントであり、この瞬間に点と線が繋がりました。  やはり、何年何十年と温めたシーンやフレーズには練りに練った歴史が培われていて、作文中に付け足された文章とは、異なる熱量を持っていますね。    内容的にもシンプルなストーリーラインで読みやすく、色々な要素を含みながらも読みやすかったです。  特に際立っていたのが、主人公の野生感です。気持ちが前へ前へ出ていて、常識を考慮しない狼少女として描かれています。この筆圧に練り込まれた力があり、溢れ、暴走ともいえる行動なのに説得力があり、力強い野生の女性として作り込まれていました。  疫病についても相当に考えられていると見え、こちら三部作という事ですが、本作ではその実態がほぼ描かれていませんが、読者の目に見えぬ場所で、恐怖がこの世界を支配していると十分に伝わりました。   こうした作風は、一夕一朝で作るのは難しいです。細かな練り直し、積み重ねで作られるキャラクターと世界観であり、「構造」とか「技術」とは別物の、いわば執念のような想いの積み重ねで作られた作品だと重々に理解できます。   練り上げる作品の凄みが本作でも読み取れて、凄く高揚しました。
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水谷様 このたびは拙作をお読みくださり、丁寧で真摯なレビューありがとうございました。 私にとっても、自分のなかに貯めきった執念を絞り出したような作品ですので、そこを汲み取ってお読み下さったことがなによりうれしく存じます。この作品は、これがなければ小説など書き始めることはなかった、自分にとっては記念碑的な存在です。 稚拙な部分は多々ありますが、それでも、この物語を吐き出すことで、この何十年の自分を肯定することが出来たことはとても幸せな経験でした。そのうえでこんな素敵なレビューをいただけましたこと、心より感謝致します。
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