りかりー

続き 「モリス、起きろ。起きないなら襲うぞ」 …………? 目が覚めて、ぼんやりしてまだ夢を見ている気がした。 ベッドの上で不敵な笑顔で覆い被さっているのは、ふたつ年上のお兄ちゃん。 「朝メシ冷めるだろ。それともこのまま俺に襲われるか?」 お兄ちゃんの瞳が妖しく光る。 あたふたと起き上がろうとして、ふわっと横抱きにされた。 「つかまってろ」 慌ててお兄ちゃんの首にしがみついた。 朝ごはんをふたりで食べ学校へ。 車から降りると周りにいた女子がお兄ちゃんを見て黄色い声があがる。 それを無視してわたしの手を引いて教室まできた。 「───」 ザアッっと風が吹いた。 お兄ちゃんがなんて言ったのか風に遮られよく聞こえなかった。 帰りにクラスの男子が青い顔で話しかけてきた。 「あんたの兄、アレは人間じゃな、」 「俺がなんだって?」 声に振り返るとお兄ちゃんが迎えに来てて、ガタガタと震え話の途中でいなくなってた。 「さあ、帰るぞ」 手を引いてくれるお兄ちゃんが何かを呟いてフッと笑った。 次の日、わたしに話しかけてきた男子は休んでいた。やっぱり昨日は具合が悪かったんだ。そう思った─── ※※※ 月のない夜。 「ひとりは寂しい。ひとりは悲しい。 心が凍えて苦しい……誰か、助けて……」 夢だと知ってるのに涙がこぼれる。 張り裂けそうな心は震える手足を抑えられなかった。 ふわっと、頭に温かい手が触れた。 その手は背中からすべてを包む。 「おまえには俺がいる」 おまえはひとりじゃないと、囁かれて見ていた悪夢が消えてく。 「だから……泣くな」 漆黒の髪、金色の瞳が頬に触れて揺れる。 泣きたいほど優しくてお兄ちゃんの手を握り返した。 「ずっと、……そばにいて」 「ああ、絶対に離れない」 額に優しいキスが降ってくる。 わたしにはその手が唯一だから……だからどこにも行かないで。 すべてを失うのは一度だけでいい。 二度と大切なものを失いたくない…… 「……助けてくれたあの時から、我の心はおまえのものだ」 切なく聞こえた声にゆっくりと目蓋が閉じてく。 「そして……おまえのその身も心も我のものだ。誰にも渡さない───」 眠りに落ちる瞬間に見えたもの。 それは、漆黒のしなやかな体と尾でわたしを包む温かな獣だった─── 後編へつづく
1件・1件
いつもありまとですにゃ(*^^*)
1件

/1ページ

1件