涙の理由を
年の終わりに、本当に素敵な短編小説に出会えました。頭の先までジーンと痺れるような、とても良い読後感を感じています。 年の離れた男性に憧れる女子高生。彼女は叔父にあたる画家の彼の絵のモデルを、好んでつとめています。モチーフは彼女の涙。この作品の重要なアイテムです。主人公の想いは所謂「片想い」であり、大人でありながら自由に生きる彼への憧れは、この「涙」という掴むにも難しいような不確かなもので感情をあらわしているように感じました。これがまた、いい。まだまだ子供、高校生。それでいて幼い頃から知る血縁でるけれど、間違いなく彼女は「女」でした。 ラストシーンに向けて話が動く中盤以降、二つ(三つ?)の恋心は、彼女の嘘も本当も無意識も含めた涙を理由に押し込めて、登場人物達が理解しようとしていきます。これもまた、切なさの中に清々しさと決意を感じます。ぐっと苦しくなるようなそれらに、読み手は心を持っていかれるでしょう。 涙の理由は、自らも解明できないもの。まして女の涙は、その理由を知ろうとするのは永久に不可能なのだと思いました。 それを受容し、感情や想いに転嫁できる人間、そして性別で生まれられた事に感謝しながら、一言で感想を締めると。 最高の作品でした。
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