森本

闇に差し込む一筋の光
まずタイトルと本文が見事に響きあっています。学生時代に恋人をトカゲの尻尾切りした藤原が、時を経て今度は自分が会社からトカゲの尻尾切りをされる。心憎いばかりの構成ですね。 藤原は器の小さい愛のない男です。そんな藤原が何もかも失ったとき、助けてくれたのは妻子でも実家でもなく、かつて捨てた恋人でした。 冬のベンチで寒さに震えている藤原に差し出されたお握りとお茶。恋人によく似た娘の笑顔と、屈託のないおしゃべり。 小さな小さな、温かい救いです。人間は案外、小さなものにこそ救われるのかもしれません。 作者さまは藤原という脆弱な人間を描ききることによって、読み手であるわたしに「小さな、でもかけがえのない救い」を教えてくださいました。 人間を描く。それは堅牢な筆力がなくてはできません。作者さまの努力に敬意を表すとともに、この物語を書いて下さってありがとうと言いたいです。 読む人を選ばない作品なので、未読のかたはぜひご高読ください。心に温かな光が射しこむと思いますよ。
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過分なご感想をありがとうございます。 小さな男の小さな物語ですけれども、最後に自分が捨ててきた「善意」によって生かされていることに気づくような、そんな話を書いてみたくて挑戦しました。普段とはテイストが違い沈鬱なトーンですが、読み手を選ばないと言っていただけて大変安心いたしました。
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死と再生の物語でもあるので、どんな読み手にも受け入れられると思いますよ(^ー^)。
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