鵜木曽 銘

続・感想の続きです
ホワイダニットを「動機当て」(「犯人当て」に倣った言い方ですが)という形で書くのはとても難しいです。というのも、与えられた情報から幾通りもの説明を与えることができてしまいますから。「これが絶対唯一の解だ」と示すことは、動機に関しては原理的に不可能でしょう。ですからやれることは、いちばんもっともらしい説を提示して読者を黙らせることだと思います。あるいは一番面白いだろうと思える結論を出してしまえば、「そりゃ他にも考えられるだろうけど、これ以上に面白いの?」と言う事ができます。今回の話ですと、男子生徒の狙いが主人公に限定される根拠がもっと多く、明示的にし、蓋然性を高めること、そして読者に動機を察させないことができると、もっと面白い作品になったのではないかと思います。後者については、よくとられる手法として、一見「これかな?」と思わせる結論をにおわせて、それに沿って話を構成していく(カバーストーリーを書いていく)、そしてできた話を、「実はこうなんです!」と、真の動機でひっくり返す、というものがあります。別にこの手法で書け、と言っているわけでは全くありませんが、今後もホワイダニットを書かれる場合は、そういった手法を考えて見てもいいかもしれません。ホワイダニットの面白い作品としましては、米澤穂信『満願』、連城三紀彦『宵待草夜情』などがあります。参考になるかもしれませんので、もしよろしければ読んでみてください。  探偵が現場に出向かず、話だけを聞いて推理をする、という形式はとても楽しいです。それに、推理小説の形態として「ホワイダニット」は一番ストーリーに深みを持たせられるものだと思っています。今回の作品も、主人公が真相を知った後で男子高校生を文化祭に誘うシーンは短編小説の「結末」にふさわしい締め方で良かったと思います。長文の感想、失礼いたしました。興味深い作品を、ありがとうございました。
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感想ありがとうございました。 自分では気付けないことをたくさん丁寧に教えていただき、今後の執筆活動の意欲がわいてきました。 このような凄く貴重な意見を聞けることは中々ないので、とても参考になりました。 この度は、本当にありがとうございました。
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