にね

かわいくてかなしくて非情、それがロボット
雲灯さんのロボットものの中で、いちばん好きだなあと感じた本作でした(お恥ずかしながら全作品に目を通してはおりません、すみません。読んだいくつかの中で、ということでご理解ください)私はこれまでロボットをかわいいと思ったことはないんですが、本作の登場人物ならぬ登場ロボット、ブルーのことを、初めてかわいいと思いました。ただひたすら、掃除をして、掃除をして、掃除をする。その健気さといったら! 思わずペコメに「かわいい」と書いてしまったほどです。しかし、物語の切ない展開に引き込まれ、余韻を噛み締めるうちに、ふと思ったのです。掃除をするロボットに健気さを見出すこと自体が、人間のエゴではないかと。 本作からは、さまざまな問題提起を見出すことができます。ロボットが人間と同じだけの自我を持ってしまうことへの危機意識。将来、人間がロボットに取って代わられるのではないかという恐怖。現代人の多くが忘れ去っている労働の本質。ロボットの存在意義。どれも、単体で一本お話が書けそうなほど深いテーマです。しかし、雲灯さんはそうなさらず、それらをぎゅっと詰め込んで、ひとつの悲しい物語として昇華させました。それはなぜか。雲灯さんが、ロボットの本質を愛してらっしゃるからなのではないかと、個人的に思いました。ときに人間は、ロボットをかわいいと思ったり、かなしいと思ったり、非情だと思ったりします。相反する感情のようですが、それらが両立しうることは本作を読んだ方ならわかってくださるでしょう。しかし、ロボットをかわいいと思うのも、かなしいと思うのも、非情だと思うのも、人間の持つ感情論に則った、人間のエゴでしかありません。どれもロボットの一面にすぎませんし、ロボットの真実の姿なのだろうと思います。そういう意味では、本作で最後までロボットであり続けたのは、ブルーだけでした。あなたの目には、これからもひとり掃除をして、掃除をして、掃除をするブルーが、どのように映りましたか? ロボットを丸ごと愛してらっしゃる、雲灯さんらしいお話だと思います。読み終えたあと、なんだかすごく考えさせられました。ありがとうございました。
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にねさま 雲灯の書くロボットへ「かわいい」という言葉は至上の褒め言葉であります。作者自身もロボットを「かわいい」「かわいい」言いながら書いており、「かわいい」という単語は非常にウェイトが大きいです。ありがとうございます。かわいい。 にねさまのご慧眼の通り、私の思い描くロボットの「かわいい」はどうやら一般的ではないようです。 〝無情〟に動くロボットだからこそ、周囲との環境の落差ゆえに「かわいい」とも、あるいはそこに「かわいい」「健気」以外の「残酷」「冷たい」という点を共存させられるのではと思っています。 人間の思い描き方によって同じ存在であるはずの個々のロボットが、いくつもの存在に様変わりす
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