『ワンテンポ遅い優等生』 友人の美少女ちゃんとの会話。 「不良君ってかっこいいよね」 「え!?」 私は思わず驚きの声をあげた。 「実は前に不良君が雨の日に、捨て猫に傘をさしてあげてるのを見たんだ」 私は思い返す。 それって、優等生君が動物病院や役所に連絡して飼い主を探してたやつだよね。 「体育祭のリレーでも最後ぶっちぎりだったし」 実行委員会だからって、優等生君がリレーを押し付けられた鈍足君と一緒に放課後ずっと練習してたやつだ。 バトンパスがきれいだったな。練習をさぼってた不良君以外の。 「私が他の学校の不良にさらわれた時助けに来てくれたし」 元々不良君を誘い出すために、美少女ちゃんはさらわれたんだったような。 優等生君が警察に通報した上で、警察が到着するまでの時間稼ぎでクラスのラインで連絡取って、美少女ちゃん救出の計画立ててたやつ。 不良君が先走って一人で突入したんだよね。 「私がその後さらわれたショックで引きこもってた時に、無理やり連れだして気晴らししてくれたのも不良君だし」 美少女ちゃんが休んでる間、授業のノートをとってくれてたの優等生君だったな。 自分がとったのを写すんじゃなくて、すぐに復帰できるように分かり易くまとめ直した奴。 気がまぎれるようにって、慣れないイラストとか書いて放課後まで残ってたのを見てた。 「クラスでお見舞いに来てくれたのって、あなたと不良君以外は何人かだけだった」 「大人数で押しかけるのは迷惑だし、プレッシャーになるのは良くないから仲の良い人だけがお見舞いに行くようにしたんだよ」 優等生君の提案でね。 遠回りして毎日美少女ちゃんにノートを届けるよう、私に頭を下げに来たのは担任じゃなくて、優等生君だった。 なんでそこまでするのと、優等生君に聞けばクラスメイトなんだから当然だろと、普通に答えられた。 「不良君は私が大事だから絶対守るんだって言ってくれた」 「そうなんだ~」 優等生君は自分とかかわりがあればクラスメイトだっていう薄い絆でも尽力してくれるけどね。 ただ、その時美少女ちゃんの心に響くのは不良君の行動だったのだ。 もう少し美少女ちゃん大人だったら優等生君の優しさにも気付けただろう。 もしくはあと一歩優等生君の行動が早ければ、美少女ちゃんは優等生君の存在に気付けただろう。 「ワンテンポ遅かったね優等生」 こっそりつぶやいた私は笑う。
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