本棚にしまったまま忘れていた短編小説のような。
「人の記憶というものは酷く曖昧で、不確かなものだ。」 よく目にする一文から始まる作品です。けれどだからこそ、読み手にとって入り込みやすく、読みやすい。その後に続いていく文章もとっても読みやすいのですが、ところどころに引っかかるところがあります。躓くと言えばいいかな。散歩していたら何気ないところで躓いて何かに気づくような。 そういう感覚を大事になさっている作品だなぁと感じました。躓くところでは読み手に「へぇ、こういうものがあるんだ」と知らせ、それ以外では読みやすく想起しやすい日常を思い起こさせる。台詞回し、情景描写、全て素晴らしくて没頭して読んでしまいました。そうとは思わせない、書き手の文章へ向かう姿勢を思わずにいられない気持ちになります。 最後まで読むと、日常を大切にしようと、そして大切なものを大切と忘れないようにしようと心に刻み込む気持ちになれる作品でした。 とても素敵な物語をありがとうございます。

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