昭島瑛子

混沌の世界を混沌のまま描く
ここは蜜原さんのレビュー欄ですが、昨今の小説ハウツーの愚痴から始めさせてください(笑) 書籍、Web記事、Twitterなどさまざまな場所で新人賞を受賞できる小説、売れる小説の書き方に関する情報が発信されていますが、それらは「とにかくわかりやすい小説」を書くよう要求してきます。 主人公が誰で目的が何なのか1ページ目からわかるように、時間を行き来しないように、主人公が切り替わる群像劇は書かないように(!)など、読者が迷子にならないよう、とにかくわかりやすい小説を書くように言われます。 しかし、古典作品やプロ作家の作品には時間を行き来する小説も群像劇ももちろんあり、ある程度集中して読む必要はあっても決して駄目な小説ではなく、むしろ素晴らしい小説ばかりです。 そのような作品に出会うと私は思います。「わかりやすさがなんぼのもんじゃい」と。 前置きが大変長くなりましたが、蜜原さんの作品はまさに「わかりやすさがなんぼのもんじゃい」小説です。 巽のダークなパートもかのんたちの明るいパートも専門用語が多く、人によっては「よくわからない」と投げ出してしまうでしょう。私も蜜原さんのエッセイで日々「蜜原力」を鍛えているから楽しめているのかもしれません。 蜜原さんご自身が「終わり方もこれでいいのかな」と仰っていますが、混沌とした現実世界を混沌のまま描いた作品だと思います。 わかりやすい展開でわかりやすく感動するものだけが小説ではありません。そしてこのような作品を自由に公開できて自由に読めるのがWeb小説の魅力だと思っています。
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昭島さん、過分なお褒めの言葉、ありがとうございます!! 今夜あげるエッセイ、「375ch-III」であとがきめいたことを書くとして、わたしも小説のハウツーやらに思うことがあります。 大谷崎の文章読本は、もう巨匠が書かれているだけあって参考になりますよね。 でも、今量産されている文章、小説のハウツーは、作家、編集者、批評家などによって書かれていますが、肝心の著者の作品を読むと萎えるものが多いのです。誰とは書きませんが。 とは言っても、「Something In The Air」はそういうのに挑戦してやろうとか、そんな意気込みはなかったのです。ただもう書けなくて、ああ、これならいけるかもし
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おお、エッセイで後書き!楽しみです! 前作に引き続き、まさにコロナ禍の今書かれて今読まれる小説だと思います。 私は今公募挑戦中の身なのですが、受賞を目指すような作品を書こうとするほど窮屈な気がしています。 混沌とした作品でも心動かされるし、単純明快なものだけが小説じゃないんだと改めて感じました。
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