りかりー

※※※ この世界に来てからひと月が経った。 十二単は重くて、誰も見ていない時には、衣から蝉の脱け殻のように抜け出し御簾から出ていた。 今日も、桜の咲く庭に降り、はらはらと散る桜が綺麗で見上げてたら、誰かの視線を感じた。 まさか、誰も来ないよね。 見つかったら侍女たちに怒られる。 「八重樫さま!」 狐月の側近の七尾が誰かの名前を呼んだ。 七尾が誰かの後を追ってきたようだった。 振り向くと、渡り廊下に狐月に似た顔の青年が立っていた。 「桜の、化身……?」 よくわからないことを呟いて、狐月に似た青年は呆然とわたしを見てた。 「姫、そのような姿で庭に下りるなどもっての他です!!誰か!誰かおらぬのか!」 七尾はわたしの姿を見て苦々しげに叫んだ。 叫ばれると同時に、御簾の中に戻るも現れた侍女たちに怒られた。 この世界でも、女性は男性に顔を見られてはダメらしい。 七尾からもお小言をもらい、その後で、狐月の弟だという八重樫に会った。 「兄の寵愛を受ける姫と一度会いたいとは思っていましたが……」 そりゃ、ビックリしたよねー。 侍女たちの顔も怖かった。 「ちょっとだけ、庭の桜が見たかったの。とっても綺麗だったから」 わたしは笑った。 顔を見られたのなら今さら隠す必要もない。 「……姫」 突然現れたわたしを受け入れたくない七尾とは違って、八重樫は優しく笑った。 八重樫はわたしに挨拶にきてくれたのだった。 その夜、やって来た狐月に、昼に八重樫から聞いた「わたしが狐月から寵愛受けている」とみんなには思われてるらしいと話したところ、 「本来ならば、俺が寝所に女を呼びつけるが、おまえの元には通ってると思われたんだろうな。だから、寵愛されてると勘違いされたんだ」 「狐月は結婚してないの?」 「結婚か?そうだな、子を成さなければならないからいずれはしなければならないだろうが、今はまだ自由でいたい」 要するに遊んでいたいわけか。 「おまえは?おまえは結婚していないのか?その歳ならもうしてるか?」 わたしのいた世界では学校というものがあって通ってて、わたしはまだ大人の仲間入りをしていない。結婚はまだまだ先だと話すと驚いていた。 「それでは通う男もいなかったのか?……不憫なヤツ」 失礼な。 キスならしたことあるわよ。 くっつけるだけの可愛いキスだけど。
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りかりーさん こんばんは❗ 今回も届きました。 いつも有り難うございます。 続きを楽しみにしてます🤗
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