りかりー

夏の夜の、星見の宴。 要は、帝主宰の東宮妃候補選びだ。 指定された場所へと座り、帝と狐月に妃候補を争いアピールをするらしい。 名指しされ、笛や箏を奏でる姫たちや、歌を詠む姫がずらりと並んでいる。 わたしには特技といえるものもひとつもないので、天の川を眺めながら座っているだけだった。 と、突然、狐月の大きな声が聞こえてきた。 「父上!!?どうかされましたかっ!?父上っ!!」 よほど慌てていたのか、呼び名が父上に変わってる。それも、すぐに焦りに変わり、助けを呼ぶ声に変わった。 周りはおろおろするばかりで動かない。 どうして誰も動かないの? 大変なことになってるかも知れないのに。それなら、わたしが! 重い衣を脱ぎ捨てて、狐月と狐月のお父さんがいるところへと飛び込んだ。 顔を真っ黒にした壮年の男性が狐月に抱き抱えられてる。足元には餅の欠片が転がっていた。 まさか、餅を喉に詰まらせたの? 対処の仕方がわからないの? みんなは白湯を手に右往左往するばかり。 わたしは狐月からお父さんの体を抱き取ると背中に回り、後ろから思い切りみぞおちのあたりを拳を作った手で押し上げた。 「ぐっ」 手応えはあった。 もう一度、力を入れて空気を押し出すようにすると、ポンと口の中から餅が転がりでた。 真っ黒だった顔色はみるみるうちに真っ赤になり咳き込んだ。 ようやく息ができるようになったのを見て、安堵すると、みんながわたしを驚きの目で見ていることに気づいた。 あ、わたし、また重い衣を脱ぎ捨ててきちゃった? 七尾も、八重樫も他の貴族たちも口をあんぐり開けてた。 宴に招待されていた姫君たちや、侍女たちの視線が刺さってものすごく痛い。 すぐに御簾の中の自分の場所に引っ込むと、ついてきていた侍女たちには絶望的な目で見られた。 「姫様、衣を脱ぎ捨てて皆の前に飛び出すなんて、そんな……もう妃候補には、無理だわ」 「あ。うん、なんか、ごめんね……」 とりあえず謝った。 でも人助けをしたんだから、結果オーライだよね?
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りかりーさん、ありがとうございます\(^^)/ 予想外の展開でした! お父様の命の恩人!
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ここから大変なのよ。運命の分岐点! ある者には嫉妬され、ある者には好かれ、ある者には邪魔者にされ、挙げ句の果てに拐われてて…… (笑)
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