りかりー

その夜、天には見事な星が輝いていた。 侍女は下がらせ、もう眠っている頃だろう。 わたしはと言えば、今夜も姿を現さなかった狐月のことをぼんやりと思っていた。 「わたしのこと……嫌い、だよね」 人間だもの。 おまけに狐月の宝珠を取り込んでる。 見ると、左手の指の中には琥珀色の光が透けて見えた。 「わたしの指を切り落とせば宝珠を取り返せたかもしれないのに、そうしなかった」 無愛想で口は悪いけど、本当はとても優しい人。 仕方なくでもここに置いてくれて、わたしが困らないように侍女までつけてくれた。 「せめて……ちょっとだけでも狐月に好かれていたらなぁ」 そうしたら、帝の話しは候補でしかないとしても嬉しかったかもしれない。 狐月がわたしを嫌っていなかったなら、あんな表情をされなかったなら。 「嫌ってはいない」 低くて聞き慣れた声がして振り返ると、そこには白い夜着姿の狐月が立っていた。 「来ないと思ってた……」 「俺は、おまえを嫌いだなんて一度も口にしたことはないぞ。嫌いならそば近くに置くものか。この結界が張られた場所なら宝珠はどこにあってもいい。それだけのためなら毎夜会いになど来ない」 狐月は怒ってた。 怒ってたというより、少し拗ねてるみたいな表情をしていた。 「おまえのことを嫌いだなんてことは絶対にない。わかったか?」 どかっと、わたしの前に座った狐月はコロンと転がるとわたしの膝の上に頭を乗せた。 わたしに背中を向けるような格好で、同じく天を見上げる。 「……おまえは、どうしてあの話を蹴った?」 「あの話?狐月の妃候補にっていう?」 「………………」 狐月は返事をしなかった。それが正解だと思った。 「わたしね、狐月には幸せになって欲しいと思ってる。笛も箏も出来ない、歌も詠めない、狐月を支える後ろ楯もない、そんなわたしが妃候補だと狐月が笑われちゃうでしょう。狐月がわたしのせいで笑われるのは嫌だったの」 わたしは知ってる。 他の姫君たち、その侍女たちがわたしをよく思ってないってこと。 それに狐月の側近たちも。 《歌も詠めないくせに》 《箏も奏でることができないくせに》 《耳や尻尾もないわ。きっと芋虫なのよ》 《ああ、嫌だ。汚らわしい》 《それなのに、どうして東宮さまが通ってるの。何の後ろ楯もないくせに!》
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りかりーさん こんばんわ 孤月の気持ちじわりとでてきましたね。また素敵なお話ありがとうございます。 それにしても 芋虫って。。。 むしろかわいらしい例えで吹き出してしまいました。 最悪な例えをしたお姫様なのでしょうが、素朴な感じが憎めないですね〰️ でも死に物狂いな取り合いなんだろうなぁ。 どうやったら本命になれるんだろう。 宝珠の力だけじゃなんともならないんでしょうね。 がんばれ✊‼️ 続編楽しみにしてます~✴️
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