わらべ

殺人容疑の女の子たち。 二十代前半のような若々しい姿の女性だが、年齢は確か40手前だった筈だ。なるほど、これこそが魔法というやつか……そう納得できた。 彼女は魔女だ。魔女というのは人間だ。生まれながらにして魔力を持ち、魔法を使役できる特別な人間に値する。出生届と共に申請しなければならない。違反すると罰がある。そして一年毎にどんな魔法をいつどこでなんのために使ったかという記録を出さなければならない。それもこれも犯罪を防止するためだ。もちろん、上手く使って役立てている人もいるし、要は使い方なのだ。 そしてこの人は20人もの人を殺したそうだ。。魔法で殺していたから消化がなかなか掴めず、操作は難航していたらしい。 捕まった彼女は仕方ないという風にすんなりと受け入れていたらしい。 人に金を積まれて頼まれて殺していたという話から現代の暗殺者なんて呼ばれている。 「変わった方ですね。私から面白い話なんて聞かないと思いますけど……」 金色の瞳がこちらを見ていて、思わずどきりとした。見透かされている気がした。 「魔女の方と話す機会もそう多くはないですから……」 「ああ、隠している人も多いですよね。私がこんな風に捕まって、また魔女の肩身が狭くなってしまうかしら……」 ふう、と息をつく彼女は憂いているらしかった。 「どうして人を殺したんですか?」 本題をつつくとなんてことない顔で彼女が答える。 「頼まれたから。お金もいただいて……私の仕事だったんですよ」 そうじゃなくて。 どうしてその道を選んだんだろうと思ったが上手く聞き出すことはできなかった。 「ただ」 少しだけ俯いた彼女の表情は変わらない。 「もし私の行いで深く悲しみ、傷ついた人がいるのならば申し訳ないと思ってはいます」 口からの出まかせ、反省したふり、嘘をついている……そうも思えたが、違うような気がした。 何にも関係ない俺にだけ呟けた、本音のような気がしたのだ。 「自分の力を試してみたかった。どこまでやれるか知りたかった。私はここまでだったということでしょう」 最後の裁判で彼女はそう語ったらしい。 判決は死刑だった。 優れた魔女がこの世から一人いなくなっただけの話だ。
3件

この投稿に対するコメントはありません