ロボットが人間になるということ
まずはじめに謝らなければいけないのは、今から書くことが『ロボットが好きすぎて好きすぎる人間』仕様の色眼鏡をかけている、つまりめちゃめちゃドン引き覚悟の感想であるという点であります。 『私』ことミスター・セクサロイドは、もともと有機体を持ったロボットからトーコの愛と大枚、国の法案成立によりクローン技術のバイオロジカルパーツに換装され、人間となった存在です。 人が20歳で大人といきなり言われてしまうように、否応にロボットから人間に移行した男の思考の変遷とともに〝恋人〟トーコとのやりとりを描く……という作品となっております。私が大好きだ。 既存作品の名前を出してしまって本当に恐縮ですが、「まるで『A.I.』のジゴロ・ジョーが『ロンググッドバイ』のフィリップ・マーロウになっていく過程みたいだ!! 好き!!!」という個人的喜びもありました。 思考するAIロボットの一人称は、個人的には究極的に難しい部類に入ると思っています。 令和3年現在、人工知能は人間の思考に似たやり取りをおこうなうことができても、その言葉に込められた微細な感情を理解している域にはないので、人間が想起する感情の描写はほとんど封じなければならないのが〝フェア〟かもしれない(と個人的には思っている)のです。 ともすれば私はついつい、ロボットの一人称を書くときこの描写の制限に緩くしてしまうのですが、この作品の冒頭から序盤、ミスターが人間になったことでロボットの頃の思考回路から徐々に人間の感情を得ていく様を、ロジカルな文章でグイグイ引き込ませてくれます。 数字とパラメーターで思考するロボットから感情を描写する人間への移行を、はやくもさんはくすりと笑ってしまう一人称を巧みに駆使しており、素晴らしいと思います。 この域に行きたい。 後半は特にミスターの内面とトーコの感情にフォーカスされていて、ロボットは奉仕という本分のためにトーコを〝愛している〟のか、愛すとは果たして何なのか、我々の感情を支えている『記憶』の世界に放り出されたミスターと、ロボットで亡くなったことで手放してしまったものの大きさに気づくトーコのすれ違いがほろ苦く、 この丁寧な過程があるからこその最後のページは「よかったぁ(涙)」と安堵しました。 とても面白かったです!! 素晴らしい小説をありがとうございます!
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悲鳴を上げそうです。雲さんほめすぎ!! ありがとうございます。 ジゴロ・ジョーは構想段階から、どうしても頭に浮かんできました。雲さんの「真愛ならざるもの」も当然、意識しました。 元セクサロイド(男)の一人称になったのは、そのおかげかも知れませんね。 喜んでいただけて幸いです。 さて、ノルマをこなしたことだし、本棚に溜まった作品を読みに行かなくては。 雲さん、いっぱい書いているなあ😊
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「真愛ならざるもの」を意識していただいて恐縮です///
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