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りっち
りかりー
2021/6/25 7:50
毎日応援ありがとうございます。 お礼にミニ話をプレゼント! 『若恋』初恋 降りしきる雨の中、 「帯刀、おまえいつか女にササレるぞ」 俺は、大神奏から呆れ顔で言われてたことを思い出していた。 遊びに遊んだ、自業自得か。 「それにしても、くそっ、いってぇな」 腹を押さえて歩き続け、痛みが増してすぐそばの塀に寄りかかった。 「あのっ、大丈夫ですか?」 降ってくる声に目を開けると、開いた傘を俺に差し出すエプロン姿の若い女がいた。 目の前はオンボロアパート。そこの住人らしかった。 「少し休めば大丈夫だ」 「あの、でも、それ、ケガして」 彼女が俺の腹を見て顔を青くした。 人を呼ばれても困る。 立ち上がり歩きだそうとしたが、体が言うことを効かない。めまいまでしてきた。 「わっ、どうしよ。あのっ!」 慌てる彼女を前に、俺は意識を失った。 ※※※ 「気がついた、よかった!」 消毒薬の匂い……ここはどこだ? やけに古くさい部屋で俺は目を覚ました。 どうやら、傷の手当てをしてくれたらしい。 腹に触ると包帯が巻かれていた。 「悪いな、迷惑かけて」 「いいの、困った時はお互い様だから」 彼女は柔らかく笑った。 あいつらは帰らない俺を心配してるだろうが、ここには呼びつけたくなかった。 彼女の言うように、少し動けるようになったら出ていこう。 そう思って目を閉じた。 毎日、傷口を消毒し換えられる包帯。 俺に何があったのか聞かない。それも心地よくて甘えていた。 あいつらには無事だとだけ返し、しばらく放っておくように指示を出した。 ある日、アパートの前でガラの悪い声が聞こえ、俺が戸口で怯える彼女の隣に立つと、男は姿を消した。 「悪い男にでも引っ掛かったか?」 「そうじゃないの……だけど」 言葉を濁す彼女には何か事情があるんだろう。 そして、2週間後。 俺は迎えに来たあいつらの前で、 「困ったことがあったら俺を頼ってこい」 と、胸元から外したものを握らせた。 「これ……」 「俺は大神組の帯刀。……助けてくれた恩は忘れない」 彼女は寂しそうにくちびるを噛んだ。 けれども、すぐに顔を上げて笑顔を見せてくれた。とても優しい笑顔だった。 そして、一年後。 俺を助けてくれた彼女が、龍神会の『競り』にかけられることを知った。 「どうして、りっちが…」 2枚目につづく
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りっち
2021/6/25 19:18
朝から仕事終わりの楽しみにしてました。 ありがとうございます(✿ ♡‿♡)
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りかりー