エブリスタ
さがす
本棚
通知
メニュー
コメント
真由
りかりー
2021/7/7 19:19
つづき、2枚目です。 七夕。 それは、一年に一度だけ、愛しい者と会える日。 遥か天の川を渡って、たった一晩かぎりの逢瀬。 それでもいい。 君の元気な姿をひとめ見ることができるのなら。 あの時言えなかった言葉を伝えることができるのなら。 たったひと言。君に。 七夕まつりの夜。 あの時と同じ浴衣に袖を通して、 あの時と同じように出店を抜けて、 あの時と同じように高台へ登って、 あの時と同じように打ち上がる花火を見た。 花火はもうすぐ終わる。 そして、俺の恋も終わる。 静かに目を伏せる。 打ち上がる花火の音が、最後の恋を散らしていく。 カラン 不意に、微かな下駄の音がして振り向いた。 「よかった。流星くんがいてくれた。……っ!?」 鮮やかな光の色に照らされた牡丹柄の浴衣。 君の面影を濃く残す大人になった笑顔。 振り返ると同時に駆け出して、この腕に抱き締めてた。 もう二度と会えないと思った。 もう生きていないかもしれないと苦しかった。 「約束したよね。5年後に会おうって」 ああ、言った。言ったさ。 病気でこの街を去らなきゃいけないって知って、どの街へ行ってもいい、君に生きてて欲しいと思ったんだ。 「わたし、頑張ったんだよ。流星くんが七夕まつりで会おうって言ってくれたから」 華奢で細い体。 たくさんたくさん頑張ったんだろう。 抱き締めきれなくて、もっともっと抱き締めたくて腕に力をいれた。 今夜、この一瞬でいい。 君に会えたキセキ。七夕の奇跡。 「流星くんは……いつも温かかったね。うわべじゃなくて心が。こんな風に」 背中に腕が回されて、君が目を潤ませ頬を擦り寄せた。 あの時と同じ優しい香りがする。 片時だって忘れられなかった。 子供の恋だと笑われようとも。 君に会えた。 5年前、あの夜に言えなかった想いをすべて伝えるよ。 ずっとずっと好きだったんだ。 「もうどこにも行かせない……真由、二度と離さない」 最後の大輪の花 夜空の星たちがふたりを照らしていた─── 【完】
いいね
・
1件
コメント
・2件
真由
2021/7/7 21:33
りかりーさん こんばんは❗ 今回の『七夕の夜に』、七夕さまにピッタリのお話しですね🤗 いつも有り難うございます🙇 梅雨明けがまだでじめじめしてますが、体調に気を付けてくださいね😀
いいね
・
1件
コメント
・
1件
りかりー
2021/7/7 22:01
いつも一番に応援本当にありがとう! 真由さんに読んでもらえて嬉しいです。 また書いて送るね(*´∇`*)
いいね
・
1件
コメント
前へ
/
1ページ
1件
次へ
りかりー