潜水艦7号

健やかなる時も、病める時も
介護というものはとても大変な物です。 食事や下の世話もありますし、時間と精神を削られるものです。しかも相手に反応がないとなると、その成果や達成感も薄いでしょうし。 『植物状態の人間は本当に意識がないのか』。それは当人しか分からないのかも知れません。 現実でも、全く身体を動かせない人が脳波だけが動くので、それを外部から信号としてキャッチし、『あ、か、さ、た、な』等と話しかけて『ピッ!』と信号が鳴ったところで『か、き、く、け、こ』と絞りこんでワードを伝えるという事例があったと思います。根気のいる作業ですが、この作戦で俳句を作ってみえた記憶です。 こうした意志疎通が出来ないのは、双方にとって辛い事です。 本作品の特筆すべき点のひとつは主人公が『安易に回復しない事』にあります。 小説ですから画期的な技術や魔法のような回復とて可能ではありましょうが、あえてそうしない。その事が逆境に立ち向かう人間の力強さと優しさを際立せていると思います。 結婚する時の決まり文句である『健やかである時も病める時も』という言葉をそのまま体現する姿に、読者は心を打たれる事でありましょう。 素敵な愛のドラマです。

この投稿に対するコメントはありません