鷹取 はるな

砂漠を長らくさまよった末に――。
(以下、1月-2を読んでの感想となります) 本文中の比較的最初の方に登場する、「まるで蜃気楼の中の建物を目指すようだ」という表現に引き止められ、惹き寄せられました。 主人公の暁斗が、利用するデリヘルの会員専用ページのセキュリティをそう表するのです。 私は『蜃気楼』からの連想で、「限られた者がその鍵を開けば」たどり着くのは、「春の空を思わせる薄青を基調とした美しい」スタッフ紹介のページなどではなく砂漠に在る楽園(オアシス)そのものだと思いました。 かなとのプロフィールの隅々にまで彼の美徳を見出そうとする暁斗の姿に、並々ならぬ熱意を感じました。 ――さながら、オアシスを求めて砂漠を往く旅人の如きです。 暁斗は冒頭部分から、5週間前に初めて出会ったデリヘルのスタッフのかなとに並々ならぬ『熱』を抱いているように見えます。 心の中では「あの子」呼ばわりしているのにもかかわらず、かなとへと発する言葉は表向き丁寧過ぎるほどに丁寧です。 抑え込んでいたものが大きく、多過ぎたからなのでしょう。 二人きり部屋に入った途端にとうとうあふれ出し、こぼれ落ちてしまいました。 一方、かなとはどうでしょうか? 暁斗の熱を欲望を促し受け止め、暁斗に寄り添おうとはしますが、一つになろうとはしません。 それはけして、体に限ったことだけではないように感じられました。 この、かなとの夜明け前の砂漠のような寒々しさは職業故だからでしょうか? それとも、彼自身の理由なのでしょうか? 『熱』をかなとを求めて止まない暁斗に、砂漠のオアシスであるかなとは消え去ることなく応じるのか――。 続きが大変気になります。
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