これは恋の物語
(終始ネタバレしかありません!未読の方は何卒ご注意ください!) 氷の大地カムチャッカ。ひとりの軍人が、故国ロシアに裏切られてすべてを失い、あてもなく彷徨うシーンから物語は始まります。 雪と氷。曇天と波の音。寒さと孤独。野生動物の爪牙。厳しい自然に放り出され、いつ吹き消されてもおかしくない灯火のような命を、グレゴリーは必死に繋いでいきます。見えない先達者の恵み、彼自身の勇気、そして先住民族イテリメンのラハータ、フギン、ムニンの助け。人間は運命にも自然にも翻弄される小さな生き物に過ぎないけれど、それでも強く生き抜いていくことができる。それは確かに人間の心と意思の力によるものなのだということが、最初から示唆されていたと今更ながら気づかされます。 グレゴリーはイテリメンに深く感謝するとともに、彼らに迫るコサックの脅威を知らせなければならないという思いに駆られます。彼らと共に生活し、必死に言葉を覚え、そしてついに伝える……。しかし、その回答は思わぬものでした。 すべては神の意志のままに。そんなイテリメンの信仰と思想の象徴のような存在が、ラハータという少女です。族長の孫であり、シャーマンとして、狩りの名手として皆の尊敬を集めるラハータ。グレゴリーは彼女の生き方から大いにイテリメンの精神を学びながらも、守るべき美しい女性として認識します。そしてラハータもまた、自分の生き方を貫きつつ彼を受け入れ、ロシアの歴史や言葉を柔軟に吸収していきます。 心を引き裂かれるようなある悲しい出来事をきっかけに、グレゴリーはカルガムと名を改め、生涯イテリメンとして生きていく決意を固めます。ただし精神の隅々までイテリメンとなれたわけではない……そこに込められた痛みと悲しみに、妻となったラハータが静かに寄り添います。 物語の中で、ふたりの間に甘い言葉や雰囲気はありません。でも、このふたりの関係こそが……互いの文化と思想を尊重し、受容し、自らの内側で矛盾無く融合させる、そして新たな自分になっていくという生涯を賭けたこの営みこそが、人の恋をして為せる最も尊い愛の形なのではないでしょうか。 (入り切らないので、コメントに繋ぎます)
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ラハータのお腹が膨らむ頃、ついに現れたコサック隊。その部隊長こそが、カルガムを陥れた張本人でした。既にロシア人としての運命と呪縛から解脱したカルガムに対し、彼を見て瞬時に狂乱し、さらに愚かな罪を重ねてしまう部隊長コンドラート。この対比のなんと残酷なまでに悲しいことでしょう。 カルガムを死なせたくない。神の意志に従う。この瞬間、ラハータの内側で矛盾無く融合していた心が爆発的に発露し、世界に是を問います。 深く深くカルガムを愛したラハータ。ついに真のイテリメンとなり、この世界から離れていくカルガム。これらの条件が揃った時に初めて、カルガムと私たちは気づくのです。ラハータは紛れもなく本物のシャーマン
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「レビューが届きました」って通知をいただくと、いつも「やった♡」と小躍りするのですが、開いてこんなにびっくりしたレビューは初めてです(´⊙ω⊙`)! 愛が!作品への愛がダダ漏れに溢れている!!(⑉⊙ȏ⊙) 何ということでしょう!!  こんなに作品愛をストレートにぶつけていただいたのは人生で初めての経験です。 すごい!!細かいところまで本当に読み込んで深く深く理解してくださっていたのが文章からひしひしと伝わってきます。  本当に嬉しい(๑♡⌓♡๑) カルガムとラバータの物語を愛してくださってありがとうございますm(_ _)m二人に代わって御礼申し上げます♡(ӦvӦ。)
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