鷹取 はるな

一度止まって戻り、その後で一足飛びに跳び越えた先に。
(以下、P11~13までを読んでの感想となります) 途中から読まさせて頂く際には真っ先に「あらすじ」から始めます。 けして文字数は多くありません。 それにもかかわらず、「是非とも読んでみたい!」と興味をそそられる素晴らしい内容でした。 ――残念ながらショタボ男性声優に詳しくない私は、CVを脳内キャスティングすることが叶いませんでした。 精進して、再挑戦致したいと思います。 さて、本文中では主人公で語り手でもある貝崎が綾瀬に本音をぶつける場面が印象に残りました。 その際に綾瀬の部屋の掛け時計の秒針が刻む音が、貝崎へと移って行きます。 貝崎の声優人生を時計に例えるならば、まさに電池が切れかかっている状態です。 文字通り鳴り物入りでキャリアを刻み始めただろう針は、今は裏名義での仕事でどうにか動いているものになってしまっています。 その針が綾瀬によって一旦、止められました。 この場面で私が思い浮かんだのは、フランス語で『レトログラード』と呼ばれる時計の仕組みです。 主にカレンダーに用いられています。 英語では『レトログレード』、日本語では『逆行』と訳されます。 時計の針の動きは「円」が基本に対して、レトログラードは「扇形」です。 始点から終点へと至り、再び始点へと戻る際にはタイムラグ、時間のずれを生じさせないためにも速やかに一瞬で行われます。 貝崎にとって綾瀬はまさに、『レトログラード』ではなかったのではないでしょうか? 一瞬の内に「六年前のバイト先の先輩後輩」へと『逆行』し、そして再び一瞬にして「今現在の仕事のエッチなBLアニメの演者と音響監督と」に引き戻された・・・・・・ 時計の『レトログラード』は反復運動です。 しかし綾瀬は貝崎を声優としてはもちろんのこと、人としてもより先へと先へ連れて行ってくれる――。 私にはそう思えて仕方がありません。
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