鷹取 はるな

彼女はけして、オフィーリアなどでもなく。
相談というのは「(何かを決めるために)話し合うこと」です(三省堂国語辞典第三版より) ただ、一方的に話を聞いているだけでは到底相談と言いません。 相談している、話し合っている内につい自分の本心が透けて見えてしまうのは致し方ないことだと私は思います。 それだけ相手のことを考え、親身になっているという証拠です。 ――本作品にて、そうなるのも納得です。 主人公で語り手でもある凛緒(りお)が相談に乗っているのは、文字通り『同じ親から生まれた身内』の双子の弟・凛久(りく)だからです。 凛緒は実に姉らしく、理性的且つ客観的に弟の初めての恋、――つまり『初恋』の相談に乗ります。 始めの内は、凛緒の性格がそうさせているのかと思いました。 しかし読み進めていくと、違う様に思えて仕方がなくなりました。 そして最後まで読み終わると、確信へと変わりました。 凛緒は凛久へと話して聞かせると同時に、自分自身にも向かって言い聞かせていたのです――。 新約聖書のコリント第一の第十三章には、愛について語る有名なくだりがあります。 結婚式でもよく語られる言葉です。 「愛は寛容で、愛は慈悲にとむ。愛は妬まず、誇らず、たかぶらない」と続き、「愛は、いつまでも絶えることはない」と結ばれます。 凛久が好きになった相手の慎也について語った箇所では、この言葉を思い出しました。 人を愛する気持ちとは、けして自分のためのものではないのです。 それ故に自らが止めようとしても、けして止められないものなのです。 凛緒も又、止まらぬ想いを抱いています。 タイトルに挙げたオフィーリア、ミレーの筆による絵の様に『枯れない花』と共にその身を水面へと投じられたのならば・・・・・・ そうして自らを失わないのが彼女の強さであり、切なさでもあります。 凛緒の、凛久への『姉』としての「愛は、いつまでも絶えることはない」と思いました。
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レビューありがとうございます、鷹取様! なんという美しい言葉の数々……オフィーリアと聴いてものすごく納得してしまった私がいる……。 簡単にその花を枯らすことができたら誰も苦労はしなけれど、枯れない花だからこそ美しくもあるのでしょうね。まさに、愛とはそういうもの。 いつか凛久も気づく時が来るのでしょうかね、姉の愛の真実に。
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連想(妄想?)に次ぐ連想の感想で失礼を致しました<(_ _)> あのミレーの絵は美しいのですが、『生きる』美しさではないと思います。 凛緒には『生きる』ことを選んだ美しさを感じました。 「姉の真実の愛」ではなく、「姉の愛の真実」と言ったアキラさんに深いものを見出しました……
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コリントの手紙にシェークスピアです か。 レビューしてる方の教養が思い知らされますな。 しかも、この凄い褒めっぷり。 愛情込め込めですね。 こんなのを見せられた日には、読まないではおかれんでしょう。 9分か。筆休めに丁度。
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恐縮です<(_ _)> 手当たり次第に読んでいるだけです。 雑食なものでして。 思い入れを存分に語らさせて頂きました。
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読後に再度見て、言い尽くされていると感じましたので、右に同じで。
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ありがとうございます<(_ _)> そう言って頂けるのが何よりもありがたいです。
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