高杜 凪咲

あんたは、餌にする程の価値もないわ
 随分と遅くなり、申し訳ないです。  満月を背に蝙蝠を従える悪女。いえ、美女なヴァンパイア凪咲をありがとうございます!!  何を挑発しているのか、今度はどんなトラブルを起こすつもりなのか・・・と同姓同名だけど小心者な別人格の私はビクビクです。  大人しく、輸血用血液を先生に貰って飲んでて下さい。女の子が危険な事するんじゃありません。お姉ちゃんは泣きますよ!!と言って、聞いてくれる子じゃありません。  元気いっぱいに何事かトラブルを起こして、行き当たりばったりに大暴れして力ずくで解決というより、終局へ向かわせるタイプの彼女です。  今回もそのパターンで行くのでしょう。  さて、そろそろ彼女にお出まし願いましょう。 「退屈ね。何か面白いものでも落ちてないかしら」  傍にいる蝙蝠達に、目を覚ました彼女はそう問うた。  周囲を我が物顔で自在に飛ぶ蝙蝠は、彼女の下僕だ。どう調教したのか知らないが、統率が取れてとっても優秀、可愛くて有能な彼らは、この主が大好きだった。  なので、どこへ行っても離れたりしない。 『人間狩り』 「気分じゃないわね」 『散歩』 「ただフラフラ歩くだけもね」 『枝遊び』 「それはアナタたちがやりたいことでしょう?」  ふぅと肩を竦めて、彼女は空を見上げた。 「またどこかのバーで飲もうかしら」  最近の人間の血はとにかく不味い。  栄養がないというわけではなくて、病気になったら薬を飲む機会が増えた上、不摂生をする生活スタイルに切り替わりつつある。  そんなマズイ血を飲もうという気にはなれず、人間の血液の代わりに赤ワインを代用する。そんな生活もここ最近は長くなっていた。   そういえば、そろそろ資金調達もせねばならない。  どこかの富豪でも襲って、金目の物を奪って得る。ついでに良さそうな人間がいたら血を頂いて下僕にすることもしばしばあった。 『主~! あっちの山の中で神父が死にかけてる~』  一匹の蝙蝠が、面白そうなものを見つけてきた。 「暇つぶしにはなりそうね。それはどこ? 行ってみましょう」  後ろで髪を一括りにし、身支度を整える。  ピンヒールを履いて、意気揚々と住処を後にした。  長く生きる彼女に、人間らしい望みを思い起こさせる出来事が待っているとも知らずに……。  何が起こったのか、続きのSSは宝物庫にて公開させて頂いております。
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