平木明日香

これぞ小説、という始まり
「天井の低い小さなライブハウスのステージで、千里先輩は歌っていた。地下にあるそこはフロアも含めて全てが窮屈のする感じのする場所で、だから先輩は、抑圧とか束縛とか、そういう何かに抗っている印象がして、歌うというより戦っている感じがした。」 エブリスタで見た小説たちの中で、これほど引き込まれた文章は他にありません。作者の技量を感じさせる文章で、映像などの視覚的な効果よりも、立体感のある「心象風景」を感じることができた始まり方でした。 すごいです! 小説は書けばいいってものではなく、どちらかというとどれだけ「引き算」ができるかにかかっていると思います。 「小説」なんていうカテゴリーは時代的にエンタメ業界の下位互換的な位置に属しつつあるツールですし、「ビジネスという側面でお金を稼ぐ」という意味では、漫画や映画などのツールには手も足も出ません。 なぜなら、「情報伝達量」の効率が、他のツールと比べて遥かに弱いからです。 5分という時間で小説が伝えられることはわずかですが、CMやPVなどの映像表現では、文章と比べ、圧倒的な情報量を5分の中に詰め込むことができます。 早く言ってしまえば、「小説」とは、情報を伝えるという部分だけに焦点を当てれば、「戦前や戦時中のエンタメ業界」を、お金や技術的なツールがない状態での1つの実践として、現状社会での社会的な道具や一般家庭にも共有できる『時代的な情報伝達手段』だったわけです。 ちょうど、私たちがメールを送るのにスマホを活用できたり、手軽に動画を見れたりするように、その時代ならではの資本的な「媒体」だったわけです。 だから、今の時代の小説には、情報を伝えるという表現以上に、視覚的な効果だけでは伝えられない「時間」や「距離」を、言葉として構成していく必要があると感じています。 この作品には、その可能性が感じられました。 これからの篠谷さんの活動に注目しています!頑張ってください!
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ありがとうございます!! 私も常々、視覚的であることに偏りたくないというか、そこをゴールと思ってしまったら小説である意味がないぞと強く思っているタイプなので、最高に嬉しい言葉です。 そこの可能性を突き詰めて、腕を上げていきたいですね。 ありがとうございます! お互いに頑張りましょう!
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