布原夏芽

わけもわからずふれあいから遠ざけられた王子さまの成長譚
 現代にも通ずる“伝染病による隔離”という事実の重みを前にして、それとは対照的に、孤独ながらもたくましく生き抜く王子さまのひたむきさに引き込まれました。  薬と偽られて毒を盛られていた王子さまが、自分と同じ境遇のキツネと出会ったことで、野草やカビが毒にも薬にもなるなどの確かな知識を得て、大人になっていく姿が感動的です。  病にかかって死ぬことを恐れるよりも、職も家族も遠ざけられて人生おしまいだと嘆く兵隊たちは、滑稽に描かれているけれど寓話として考えさせられるところがあります。  けれども、そういった大人の思惑や恐ろしい陰謀が背景にちらつく中で、最後は、不遇な時代に豊かさを与えてくれた子どもの頃の友達に照準を合わせた幕切れ。あたたかく良い余韻を残していると思いました。
1件・1件
お察しの通り、現代の伝染病に対する人類の異常なまでの混乱を皮肉ってみました。 あえて、ほんわかした優しさでコーティングしたロマンチックなおとぎ話に仕立ててみました。 伝染病に対する無知と無理解と世相に流されるまま自分の生活さえ守る事ができれば良いと頑なになる大人を敢えて滑稽に描いてみました。 どんな時にも正しく真実を見極める勇気と努力を怠っては愛する家族さえ守れない事を強調してみました。 布原さんの深い思索で僕の描きたかった祈りを論理的に示唆していただきました事に、心から感謝申し上げます。 ありがとうございます。
1件

/1ページ

1件