あーる

一飛べるか ままならない想いの先にふたりは……
ある雪の舞う日。七年前に道を分けたふたりが再会したその、たった、一日の物語。 それなのに読み終わったとき、彼らの重ねた想いの年月とともに、いろいろな感情が渦巻き彼らの生き様の重みを味わわされる読み応えに、ため息がでるほどお話の世界にどっぷりと浸かりました。 まず物語の入口となるタイトルに惹かれます。 積み重なる想い。融けない想い。しっとりと大人でいて確固たる強い想いを想像し、物語への期待が高まりました。 裕福とは言えない家に生まれたふたりを翻弄するできごと。家同士の決めごとに逆らうことなどできない……己の意志を通すことはままならぬ時代。だからこその秘めたる想いとその潔さと泥臭さが見事に描かれていると感じます。 放任主義の家で育った有馬さんは橘の家族に焦がれ、守られ愛されて育った伊織さんは有馬さんの寂しさに寄り添いたいと思う。だからお互いを求めあったのだろうと思うと添うべきふたりなのだと感じました。 また、主人公ふたりの愛情の交錯だけでけでなく、描かれる兄弟愛、家族愛、そして許嫁の彼女の想いにも激しく心動かされ涙してしまいました。 特に伊織さんとお兄様のやり取りには心震えました。全ての業を受け入れ弟の背中をしっかりと押す深い愛情には涙を流さずにはいられません。 この一日、一晩のうちに、兄の深い愛情を知り、想い人との道に思慮、葛藤をくりかえし覚悟を決めたとき、人としてぐんと大きく成長した姿を伊織さんに感じました。皆から愛されていることを思い知った伊織さんは、きっと有馬さんとならどんな形になろうとも幸せになれるはずと感じます。 そして、後半の想いが通じた後の場面がまた素敵でした。有馬さんの施す濃厚な情交が、これまでの有馬さんが伊織さんへと抱えていた劣情の大きさを表しているようで読んでいるこちらも萌え滾ります。受け入れる側になると己が変わってしまうのではと戸惑っていた伊織さんも情事が進むにつれその行為に、ただ受け止めるだけでなく包むように相手への愛しさ募らせていくのもたまらない気持ちになりました。 時代ものならではのままならぬ想いの切なさと凛とした雰囲気。静かに雪の降る景色、番のコハクチョウや川の流れに重ねられる気持ちの情景描写。すべてが相まって物語の世界に惹き込まれ、読了に彼らに灯る幸せを願わずにはいられないとてもとても素晴らしいお話でした!
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あーるさん この度は拙作を読んでいただき、とってもとっても素敵な感想をお寄せ下さり、本当にありがとうございました。 この度もあーるさんの映像美溢れる文章を追っているうちに、まるで目の前で「根雪」の映画を観ているような気分になり、読み終えた時には気づくと涙があふれていました。 あーるさん、この度も深い愛情をもって物語に向き合ってくださり、本当にありがとうごいざました。私の当時の想い、イメージ、あーるさんが全て掬い取ってくださり、こうやって感想までお寄せいただいたこと……とても感激しております。 あーるさんの仰る通り、「根雪」は二人の積み重ねられた想いです。そして物語になっているのはその中の、
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