狗夜 凛

美しい言葉が流れる柔らかい物語。
作者の瀬波沙々さんの奥底には、心の在り様に関わらず、清らかな文字が滔々と流れているのだろうなと感じるに足る素敵な作品でありました。 芽衣子と流伊の気持ちが交わり、高まっていくさまが、とても美しい筆致で描かれており、恋愛作品のクライマックスシーンを短編小説にぎゅっと詰め込んだ形になっています。 庭園や、杏璃さんというキャラクターがファンタジックな要素に色をつけてはいますが、要となる二人はその中においても輝きを失わず、言ってしまえば「二人だけで完結してしまう恋の物語」を堂々と展開していました。 古風な文章や、表現方法、または世界観そのものが、現代人の接するものとはまるで違う際立つ魅力となっていて、それが単なる恋愛ものよりも遥かに透明感の高い作品に昇華させていたマジックだったと思います。 28ページ目の流伊の台詞には、この物語を象徴する強めの言葉があり、それがまた優しく、柔らかく、愛おしく、多分に彼の想いを感じられました。 おそらく芽衣子は今後も心が落ち着かない日々が続くと思いますが、そういうときめきを感じ続けられる結婚なんてなかなかありませんから、最高の幸せ者だと断言できます。 波風立たず、二人が末永く添い遂げられますように。 愛や恋が本来もつはずの美しさが濁っている現代だからこそ、美しさを純粋に極めたこの物語を読んでほしいと思いました。 脳内でキャラクターの声が聞こえ、小説でありながら、文章自体が音楽となるように旋律感があって読後感も良く、最後に書かれたあとがきも、読者としてはうれしい試みで、この作品に触れられて幸せでした。
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素敵なご感想ありがとうございます! 少し長くなってしまいましたが、短編とはいえ流伊と芽衣子2人だけでは作りづらいかなと思い、杏璃というちょっと変わり者を入れてみました(笑) あとがきまで丁寧にお読みくださり、本当に嬉しいです! 改めまして、この度はありがとうございました。
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