鷹取 はるな

透き通った蝶が見た『悪夢』
(以下、#12~17までを読んでの感想となります) 荘子に『胡蝶の夢』と題される説話があります。 夢の中で胡蝶、つまり蝶として宙を飛んでいた。 目を覚まして、ふと考えてみる。 はたして自分は「蝶になった夢」を見ていたのだろうか。 それとも実は、夢で見た蝶こそが本来の自分であって、今の自分はその「蝶が見ている夢」なのではないだろうか――。 なかなかどうして深いです。 考えに考えて夜も眠れなくなり、結果、夢が見られなくなってしまったら皮肉以外の何ものでもありません。 本作品の主人公の裕都(ひろと)にとってタイトルである『白日の夢』は、はっきり言って悪夢そのものだったと考えられます。 到底信じられない、――信じたくないような悪夢を見るのは、夜よりも昼の方が断然恐ろしいと思えるからです。 読ませて頂いたエピソードの中にも、蝶について語られる箇所があります。 私には、彼がその悪夢の真っ只ただ中をさまよい、たゆたっていた透明な蝶のように感じられました。 裕都は『放課後の教室』という花園で、美しくも淫らな一輪の花の蜜に雄蜂たちが群がる様をつぶさに眺めていました。 彼が見た光景が如何に鮮烈で且つ蠱惑的であったかは、実際に皆様方も彼の、蝶の目となってお読み頂けたらと思います。 そのままずっと漂い続けてしまいたいと望んでしまうような妖しい香りに、思わず息が詰まりそうになりました。 真昼間に見る悪夢が真に恐ろしいのは、目が覚めてからです。 ――夢魔を祓い退けてくれるはずの白い日の光の下を、これ以上何処へ逃げればいいというのでしょうか。 『途方に暮れる』とは、まさにこのことです。 辛うじて悪夢から覚めた裕都も又、『胡蝶の夢』のように自分が自分であることの『脆さ』と『揺らぎ』とを感じたのではないだろうか・・・・・・ ラストでは、そう思い至りました。
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鷹取さん、今回も素晴らしいレビューを有難うございました。 胡蝶の夢については、文言はよく聞くものの、その意味を改めて確認しましたら、本当に中々どうして深く、荘子に一体何があったのか、何より、私好みの夢か現か判らぬあやしさ漂う説話を、本作に掲示して下さったこと、誇りに思います。 蝶に関しましては、美しい方の蝶を表現することばかり考えていましたが^_^;なるほど、裕都も迷い込み、彼も捕食された蝶だったのかもなぁと思い至りました。 そのようなまた違った知的な角度から本作を捉えて頂き、 また、本作の冒頭もご覧頂けたのでしょうか…?(「途方に暮れた」の件)あらゆる角度から作品を捉えようとして下さる姿勢、
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大変丁寧なお返事をありがとうございます<(_ _)> 今回も又、『感想』の文字通りに『想ったまま、感じたまま』に書かせて頂きました。 ちなみに御作も含めて、ご依頼頂いた作品は指定箇所しか拝読しないようにしています(感想を書いた後では拝読します) 私が思う存分に想像(妄想)の翅をはばたかせることが出来たのは、ひとえに蕚さんの文章の御力だと感じ入ります。 こちらこそ、とても素晴らしい作品をご紹介頂きどうもありがとうございました。
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