「雨音」 深夜、目が覚めた。 瞼を開けたというのに、目の前には変わらない闇が広がっている。 何時だろうか? 枕もとのスマホに手を伸ばしたところで。 ぽちょん……。 と、額に水滴が落ちてきた。 雨漏りだろうか。 耳をすませば。 窓の外でゴウゴウとなる風の音と、激しく雨が地面をたたく音が聞こえた。 そういえば、夕方のニュースで、台風が接近していると言っていた。 屋根の瓦でも、飛んだのかもしれない。 ぽちょん……。 そんなことを考えているうちに、再度、額に水が落ちてきた。 雨漏りなんて運がない。 業者には明日来てもらうとして、さしむきは、ベッドからマットレスをはがして床で寝ることにしよう。 そう考えて、気づいた。 そして、恐怖した。 そう、自分がベッドに寝ているということに気づいたのだ。 この水が、雨漏りのはずがない。 なぜなら、このベッドは「二段ベッドの一段目」 つまり、屋根とこのベッドの間には、もう一つベッドがあり、雨漏りがあっても、一段目のベッドまで落ちてくることはない。 そして、上の段のベッドには、今日のコンパで酔いつぶれた同居人が寝ている。 ぽちょん……。 三滴目。この水は、雨ではない。 窓の外の台風は、勢いを増している。 雨が地面をたたく音は、絶え間なく続いている。 「むにゃむにゃ……、しょうかかんりょう」 同居人の無邪気な寝言に、私は激怒した。

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