「兄弟」 切り株が一つ。 その切り株から二本の木が育った。 二本は互いに切磋琢磨しながら育っていった。 「おい!狭いだろ」 「こっちのセリフだ」 一本ずつは周りの木よりも細い。 けれど、その根元は二本分。 他の木よりもはるかに太くなっていた。 「俺だけではここまで大きくはなれなかっただろう」 「俺だってそうだ。周りの木に埋もれていたに違いない」 一つの根元に生えた二本の木は、長い争いの末、ついに互いを認め合った。 そこに一人の人間がやってきた。 二股の木を目の前にして、上方を仰ぎ見て人間は言った。 「二股は用材になんねえから、除伐の対象だな。 無駄に太くなって、周りの木の成長の妨げになるしな」 こうして、大きく育った一本の根元から生えた二本の木は、邪魔ものとして伐倒され、腐って山に還っていったのだった。
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