「兄妹」 取り換え子。 病院で他の乳児と間違われた私は、血のつながらない両親と、血のつながらない兄の元で、幸せに暮らしていた。 私が彼らと血がつながっていない。 そう判明したのは、私が10歳の時で兄が14歳の時だった。 両親はひどく動揺した。 けれども、それは私を愛していないからではなく、私を血のつながった人間に返さなくてはいけないのではないかという同様だった。 「大丈夫だよ。私はここが好きだから」 そう言って慰めれば、両親は明らかにほっとした表情を浮かべた。 それに対して、兄はというとあっけらかんとしたもので。 「だから、昔から俺は言ってただろ、 違う子を連れ帰ったぞって。なのに、おやじもおふくろも聞かないから」 そこでにっこりと笑い。 「つーことで、俺がお前をかわいがってるのは、血がつながってると思ってたからじゃない。 もともと、血は繋がってないと知ってたからな。 お前がかわいらしいからだ。 お前はこれからも、ず~と、俺の妹だからな」 兄のその言葉を聞いて私は。 「お父さんお母さん、私、あっちの家の子になります」 と宣言し、愛しい我が家に絶叫がこだましたのだった。 時と場所は変わって。 私は私と入れ替えられた「真妹」ちゃんと話をしていた。 「その流れでなんで、家を出る気になったのか。全く分からないんだけど、 おとう、さんもおかあさんも、おにいちゃんもみんないい人、だよね」 「もちろん。実感してるでしょ」 「それは、うん」 「私も、今の家族も好きよ。私たち二人ともが素敵な家族のところに生まれて幸運だったね」 「うん。でも、それなら、元の家族のところでもよかったんじゃない? 引き止められたんでしょ」 私は、ちょっと、顔が厚くなるのを感じながら、真妹ちゃんにそっとささやいた。 「だった、ず~と、妹だなんて、嫌だったんだもの」

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