青のキカ

あなたと一緒ならどこへだって行ける
「健常者と障がい者の間に柵なんてない」というみんなの綺麗で残酷な言葉。聾者である主人公未夢にしか分からない苦しみ、惨めさ、葛藤。 その心理描写だけで終わらないのが、この物語の素晴らしい点の一つです。一番印象に残った台詞を以下に抜粋させていただきます。 ーーこの見えない柵を恨めしく思うけど、でも柵に守られている所もあって、この中では私は普通で自由で恐れなく生活できて、だからそこから飛び出す勇気がなかった。 これは今回のテーマに特化したものではなく、誰しもが味わったことのある普遍的な感情だと思いました。 誰だって、安全圏から飛び出して、外の世界に出るのは怖い。だって、外には色んな人がいて、わけもなく自分を傷付けてくることがある。石に躓いて転んで、怪我をする恐れだってある。嫌なことや怖いことがたくさん待ち構えている。 でも、柵の内側なら安心。寂しさに目を瞑れば、誰かと分かり合うことを諦めれば、飛び出す勇気のない自分の弱さに気付かないふりをすれば。ここは安全で快適。 そんな未夢の思いが痛いほど伝わってきて、苦しくなりました。私自身も感じたことのある思いだったからです。 そんな中、不器用なダンスと、一生懸命覚えた拙い手話と、たくさん練習した和太鼓で、等身大の気持ちと雨音を伝えた優彰。 「一緒に」「柵を」「超えよう」のシーンでは、自然と涙がぼろぼろと溢れました。 雁字搦めになっていた未夢の心を優彰の真っ直ぐな想いと行動が解きほぐしたのですね。 二人一緒なら、今まで超えられなかった柵だって飛び超えて、どこへだって行ける。きっと傷付くこともある。柵の内側から出たことを後悔する日だって来る。だけど、それでも外の世界へ飛び出していく。それが生きるということだから。 そんな力強く優しいメッセージを、確かに受け取りました。素敵で温かいお話を、ありがとうございました。
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コメントありがとうございます。 とても嬉しいです。書いたかいがありました。 構想は結構まえから頭の中にあったものの、なかなか形に出来ず、でも妄コン締め切り前日の子供の和太鼓の発表会に触発されて、日曜頑張って形にしてみました。頑張って良かった。 ありがとうございました。
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