「夏の夜」 月の明るい夜だった。 浜辺の散歩から帰ってきた友人に、僕は声をかけた。 「やあ、どうだった」 「最悪だったよ」 おや、そういえば一緒に外に出た友人の恋人も、友人とは別に帰ってきていた。 「喧嘩でもしたのか」 「そうじゃねえよ」 「じゃあ、どうしたんだよ」 「月だけがうまいこと雲に隠れてて、星が瞬いて、最高にロマンティックな状況でさ。 彼女も1.5倍増しでかわいく見えて、いざキスって時にな。 月が出て、はっきりと彼女の顔を照らしたんだよ」 僕は察した。 その時の彼女のかわいさは1.5倍減少していたのだろう。 そして、それは友人の方も同じく。

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