kou

花火を見ながらの会話と会話の間
 拝読させて頂きました。  一人称小説ならではの心の葛藤が現れた作品ですね。  ひまりの視点から書かれているので、人の他人の心の中を覗くことはできません。だから、夏野の彼女を取っ替え引っ替えしている倫理観や、死にたいという気持ちが理解できないことが心の言葉だけに理解できます。 これが三人称の場合、夏野の視点も入ってくるので、作品のテーマ、ひまりの気持ちを夏野に伝える伝えたい想いが判然としないものになっていたかも知れません。  夏野のいつ死んでも良いという気持ちに、ひまりの好きな人に生きていて欲しい気持ち。生きていて欲しいと言っても、夏野の気持ちは変わらない。その悔しさ虚しさ辛さが、読んでいて心苦しい。  でも、ひまりからの気持ちの告白、ひまりが死ぬかもしれない状況になって、自分は死にたいのに、ひまりには死んで欲しくない。そこから夏野の気持ちに、どんな変化があったのかは一人称視点なので分かりませんが、確実に変わってきている。  咲いては消える花火の場面は、ある意味、生と死の繰り返しを見ながらの、二人の会話は、互いに向き合わなくても花火を通じて想う気持ちを向き合わせての会話と会話の間が良い。晴れて恋人同士に戻れましたが、最後の会話は甘い会話ではなく、友達同士のような睦言。  どんな時も妥協することなく自己を主張し合って、それでいて互いに信頼を抱いていくようになるのでしょうね。  また、表紙イラストはきれいです。  花火のもっとも美しく開花した瞬間は、その一瞬にしかありませんが、その一瞬を永遠にとどめた姿にできるのは、絵ならばの表現ですね。  花火に触れる。そんなことは出来ようはずもありませんが、本編にて、ひまりが花火に触れそうというのが分かる。無理なのは理解できても、それでも手を伸ばしてしまうのが感じられるイラストです。  小説、イラスト共に素敵な作品を拝見させて頂きました。ありがとうございます。
1件・1件
kouさん 小説を読んでくださり、感想までありがとうございます! ひまりの夏野への想いや葛藤を中心にしたかったので、kouさんにそう言っていただけるとうれしいです。 人の考えは簡単にわからない。自分の想いも、相手には簡単に伝わらない。それはとてもつらくて悲しくなることかもしれませんが、その上で必死にあがいて、手を伸ばして、人と人の関係はつくられていくのかもしれませんね。 ひまりにとっても、夏野の考えや事情をすべて知ることはできないけれど、夏野だってたくさん考えて悩んでいる。それは、ひまりにもきっと伝わっていると思います。 少しずつだとしても、信頼を重ねて、笑い合える未来に歩いていける二人では
1件

/1ページ

1件