ともなり

超・妄想コンテスト『雨音』裏会場👑銅賞受賞作品
色々な面で閉じ込められていた少年が一歩踏み出すお話。この作品はお話の組み立て方が巧みで、まず狭い所で縮こまっている場面から始まり、なぜそこなのか、どうしてそう思うのかを解き明かしつつ、その過程で主人公の境遇を彼の視点を使いつつも彼に自覚のない所まで細かく読者に伝え、そしてそこから視点を彼の縮こまっている場所から外に向けさせたりします。葡萄園の主の立ち位置が実に絶妙で、その扱い方もかなり気を使ったのではないかと思いました。彼を一人にさせつつも一人にさせない、物語において一番必要な距離に置く、それゆえこの物語のキーとも言えるのではないかと思いました。彼の言葉によって閉じ込められていたはずのその世界は、実は閉じこもっていた世界なのだと気付く瞬間は劇的で少年の表情が変わるのが見える気がしました。踏み出した一歩はきっと、毎日味が違っていたお弁当を激変させるのではないかなとも思いました。
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この度は銅賞に選出いただきありがとうございます。気に入っている作品なので嬉しいです。幼い時分において、大抵の人が自分の感じたことが世界の全てだと錯覚することでしょう。閉じた世界を開くためには適切な距離感を保ってくれる大人が必要で、その存在があるかないかで時期もその後の成長速度も変わってしまうのだと思います。適切な時期に適切な手入れを受けられた少年は、きっと甘い葡萄のように実ることでしょう。そのうち自分でお弁当を作れる好青年になるに違いありません。素敵な選評を頂きありがとうございました。
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