異世界で私は鮭でした。 鮭の人生とは、生まれた瞬間から兄弟・姉妹と競い合い、川を下り海を巡り、三~五年後に故郷に帰ってくる頃には、兄弟はおろか知り合いの一人も見当たるかどうか、という過酷な試練を乗り越え、残った生命力の全てを解き放って生殖を致します。 それが当たり前だと思っていました。 でも違ったんです。 その前に兄弟・姉妹という語が出たので「兄弟/姉妹」に御入選の方々、おめでとうございます。 並びに拙作の佳作選出、有難き幸せに深く感謝を申し上げます。 惜しくも逃した方々におかれましては、鮭とは違いまた挑戦できますので大丈夫ですよ。 残念ながら異世界で鮭だった私は、前述のように鮭としての生涯を終えました。 死の間際、水面を漂いながらふと見ると、タツノオトシゴの夫婦がいちゃいちゃと踊っておりました。 タツノオトシゴの夫婦は、繁殖期になると尾を絡ませ色を変えながら踊るなどして散々盛り上がった後に、メスが卵をオスの育児嚢へと挿入して受精致します。 そして二週間程してオスの体内で孵化した稚魚が放出されると、再びメスが愛をささやきオスは受け入れ、何度か産卵を繰り返します。 タツノオトシゴは生まれてから繁殖可能な成体になるまで半年ぐらいで、寿命は鮭と同じ三~五年と言われておりますので、この営みは人生で数回は行われているはずです。 目から鱗と言うか、なんかもう全身の鱗が取れました。 なんだよ、だったら海を回ってる時にいかがわしい店の一つや二つ行っておけば良かった、途中でいい感じになったメスと外国に渡って楽しく暮せば良かった、鮭の人生クソつまんねぇ、などと呪いが漏れ出します。 と、そこへ光に包まれた巫女が現れました。 思えば、以前にも申し上げた私の巫女人生はこの時から始まっていたのでしょう。 巫女は言いました。 「あなたは異世界に人間として転生します。 好きなように楽しみなさい。 あと、今回佳作を賜った『雨滝ノ事』には『補筆版』というか原版である作品が存在するので9/16正午にリリース致します。 https://estar.jp/novels/25990543 異なるのは『補筆版』七、八、九ページのみですが、ここがむしろ深いシーンで、文字数の都合で削らなければ大賞でしたかね、残念」 ……何か釈然としませんが巫女の言うことなので受け入れます。 笑
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鮭は、一生に一度ですからね……(´;ω;`) しかも、故郷の川に帰るまで、人間の網を避け(鮭だけに)、ヒグマの爪を避け(鮭だけに)ねばなりません。 更に、鮭同士の争いに勝ち、川底によき産卵場を確保せねば、折角の卵も流れてしまうのです。 なんで過酷なんでしょう……( ´艸`;) そんな過酷な運命に弄ばれた鮭さんには、そりゃあ巫女様も慈悲を与えずにはいられませんね! 補筆版、楽しみにしております♪(≧∇≦)
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ありがとうございます( --)ノノ 幼い頃に鮭の人生を教わり、それが魚という生物のスタンダードだと思っておりましたが、実際にはけっこうレアケースなのですよね。 産卵しても子育てをしたりその後も元気に暮らしたりして、十年、二十年と生きる魚も多いです。 全ての鮭に巫女の慈悲が賜わられることを願っております。 でないともう安心してイクラもいただけませんよね(笑
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