狗夜 凛

家族の価値は、本音にこそある。
『そのままで』拝読しました。 本当に素晴らしい、一級品の作品でした。 作者コメント欄に、日々のこと、と書かれていたので、現実にこのような経験をなさっているのかな、と思いましたが、完全な創作であっても、多少の現実が入っていても、素晴らしいという言葉以外に見つからない作品でした。 私には育児の大変さが分かりません。 でも、すべてが新鮮な喜びであり、同時にすべてが不安や悩みであり、自信というものが揺らぐ課題の繰り返しだと思っています。 それが言葉を話せない子であれば、重たい悩みに落ちてしまうのは仕方ないことで、とても一人で抱えられるものではありません。 ましてや、一つの命を育てるわけですから、日々の心暗さは鮮やかに晴れないと思います。 作品では途中まで、夫が非協力的かと思っていましたが、実は頼りになってくれる存在で、それだけで胸が熱くなりました。 心が弱り、氣が消失したとき、本気で向き合ってくれたり、話を聞いてくれたり、または笑って安心させてくれたりする存在は、心を保つ拠り所になると思います。 そしてラストに、すごく明るい兆しが見えた。 その瞬間の安堵や希望は、どんな言葉を駆使しても足りないものだったと思います。 闇と呼べる苦悩の中に生まれた光が、少しずつ色を重ねていく。 現実は甘くないものかも知れませんが、あの瞬間だけでも努力に報いてくれる輝きがありました。 主人公はこれからも、いくつもの試練を味わい、また闇の中に入るかも知れません。 それを親だから、という理由で、がんばり続けるのかも知れないし、周りもそのように強制するのかも知れません。 でも、親は決して万能ではなくて、何らかの弱点があるから良いのだと思っています。 完璧な親を演じると、いつか逃避したくなるのが人間ですから、弱みを見せられる存在が近くにあって本当に良かった。 弱っているときに欲しいのは、『理解』や『共感』、『寄り添い』だと思います。 作品の中で、埋められるものが見えた気がしました。 新米ママと、新米パパ。どちらも親として、子どもと同じ年齢です。 でも二人には愛と絆があり、頼もしく見えました。 作品としての完成度、物語としてのエネルギー、私はすべてに感動し、共有した気持ちでした。 本当に素晴らしい作品です。 多くの方の目に触れることを心から祈っています。
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狗夜 凛さま このたびは拙作をお読みいただき、温かく心に届く感想をいただき、本当にありがとうございます! 狗夜さまのお言葉に、作品に対する喜びはもちろんのこと、自分自身の日々に対しても勇気をもらいました。 というのも、今作は半分ほど現在の実生活が含まれているので…そこで感じていること、心に引っかかることを詰め込んだお話にしました。 作中で非協力的に見えた夫。妻がそこまで追い込まれていることに気付かなかったのもありますが、妻自身の心に余裕がなく、視野が狭まっていて助けを求められない、そんなすれ違いでした。 育児だけでなく、何かで困ったとき、疲れたとき、家族でも友人でもご近所さんでもネット
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