進藤ニカ

ささくれた心を癒やす、優しい物語です
読了のうえ、わたし個人の感想をネタバレ無しで書かせていただきます。 名家の令嬢に転生した主人公・フェーリは、類まれな頭脳と能力を持ちながらも、感情をうまく表せない制限を背負わされた女の子です。ストーリーの基本軸は国内外の経済事情に端を発する困難な問題と、いかにかかわり、乗り越えていくかという内政モノですが、そんなジャンルのくくりにはおさまらないほどの深みがあります。 なぜなら、世界観の設定が民族文化、社会構造、人間関係にいたるまで幅広く、事細かに練り上げられているからです。そのおかげで読者として世界観に置いていかれることなく、自然に入り込んで没頭することができました。毎回、数ページ読み終えた時に、現実に戻りたくなくなるほどに酔わせてくれました。 なぜそこまで酔うのか……そのわけは、物語のもうひとつの大きな要素、つまりフェーリを中心に目まぐるしく展開していく恋愛模様が、気になって仕方ないからです。 心をのぞくギフトを持つ、寡黙で厳格な中にも優しさをのぞかせる謎めいた王子のニロ。フェーリのお付きとしてそばに仕えつつも、やんちゃな幼なじみのような言動で癒やしてくれるセルン。フェーリの婚約者であり、消せない過去の苦しみがあるゆえに、王侯貴族社会のしがらみにとらわれるキウス。 乙女心を鷲掴みにする魅力的な男性陣が、これまた個性的なフェーリといかにしてかかわり、関係を深めていくかがキーポイントで、読者としてはページをめくる原動力となりました。 そして何より、この物語の根幹には優しさがある。 登場人物たちを縛る、簡単に逃れられないしがらみは、現代のわたしたちにも通じるものがって共感を呼び、そんな疲労感を包み込むのは彼ら彼女らの、互いを想い合う温かい気持ちです。そんな気持ちに触れ、いつしか読者であるわたしまで、心癒されていました。最後まで読んでしまうと、この世界から切り離されてしまいそうで寂しさを覚えるほど。 でも、そんな心配はいらなかった。この物語には明確な終わりなど必要なく、私達の日常と同じように続いていくということがわかって、ほっとしました。 この世界は、わたしの記憶の一部としてこれからも生きていきます。そのことが嬉しく、この物語を届けてくださった作者様に対して感謝しかありません。本当に、ありがとうございました!
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かにみそどろり様 貴重なお時間をかけ拙作を最後までお読みいただき、加えてご丁寧な感想までありがとうございます! 読者に気づいて欲しい要素を余すことなく取りあげてくださり、感動と感謝で胸がいっぱいです。 ネタバレにも気をつかってくださり誠に親切で大変恐縮です…! 拙いながら人物各々の葛藤と関係性に注力して書いた分、こうして誰かの記憶に数ヶ月間でも残っていただければ嬉しいです。 恋愛脳で都合の良い展開も多くて大変恥ずかしいのですが、真摯な気持ちを書き記していただき、頑張って最後まで書けてよかったとつくづく思います。 かにみそどろり様のページコメントにどれほど救われてきたことか、改めていつ
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