本心は運命に沿わない
 本心に血の繋がらない兄への恋慕を隠す主人公。本心に生きる光明と愛する人達への慈しみを抱き締める兄。本心に友情と決して漏れない恋心とを綯い交ぜに秘める親友。  三者三様にひたむきにそれぞれの想いに葛藤し揺れ動く恋心を、出会いの思春期から結実まで実直に描いた恋愛長編でした。  物語は主人公の家族関係がメインキャラの関係性に大きく作用していますが、特に兄との出会いから広がっていく各々の「苦しみ」を描く場面はそれぞれのエピソードの中でも胸を締め付けるものがあり、辛くもありますがその後の展開には大切な部分でもありました。三人がひた隠しにしなければならなかった事には「運命」とも言える特殊な事情がそれぞれにあり、葛藤は終盤に決断へと変化していきます。  しかし、三人はそんな意地悪な「運命」に沿わなかった。逸脱しない範囲で正直に、本心の流れのままにそれぞれが結実させていった本心は、そのまま想いとなって伝わったのでした。  なんて素敵な恋物語なのか、と。  いちばん皆んなが幸せな結末ではないかもしれないし、いちばん素敵なプロセスを踏んだ恋愛ではないのかもしれない。でも、彼らにはこの「運命に沿わなかった」時間が必要だったのだ、と、読後に放心の私に納得をもたらしたのでした。こんな大人の恋愛、なんか回り道してて素敵じゃん!  個人的に、青年期のエピソードがすごく好きです。ここをぐっと腰を据えて読ませたからこそ、大人になった登場人物達の関係性がすっと入ってきたなーと思います。キャラの全員に悪い人はいないのですが、人物を丁寧に描かれる事で有名な著者様の創造したキャラクターは、全員が「らしく」躍動していて本当にワクワクしました。他作からのカメオ登場も素敵で、繰り返し読みたくなります。  甘さも青さも重さも軽妙さもある、素敵な恋愛長編の名作です。ぜひ沢山読まれて欲しい一作。とても素敵でした。ありがとうございました。
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トコダトコさま😊✨ お読みいただきありがとうございます😳 恋愛長編といいながら、本当にいろいろ詰め込んでしまいました。 なかなか伝えるのが難しかった部分を丁寧に読み取っていただきとても嬉しいです。 このお話の主人公は、実は三人いました。八重嶋碧の物語と言いながら、三人のことをずっと考えていました。だから、公亮や丈太郎のことも主役だと言っていただけたこと、本当に嬉しく思います。 端からみれば正解じゃない選択、なんでこうなるの、あの時ああしていればのすれ違い、運とタイミングって、小説の中だけでなく現実にもたくさん存在すると思いますが、「運命に沿わなかった時間」が必要だったのですね。なるほど、
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