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虚無的な若者の周りで起こる不穏な動き
とても面白かったです。公共工事入札に関わる情報漏洩事件を軸にして主人公と周囲の人間(今村さん、亜島、大輔、麻友、由紀恵)の交流を描いた作品でした。 冷淡で周囲との関わり合いを避けていながら、心のどこかでは人との交流を求めているという主人公の内的描写が秀逸でした。虚無的で何もかもを諦めているような冷淡さがありながら、寂しがり屋で誰かを求めているようなあり方はいかにも地方育ちの大学生という感じがしました。 そして、冷淡だったはずの主人公がいくつかのショッキングな出来事を経て、心の熱を取り戻し黒幕と対峙する場面はわくわくしました。友人のため、などといった明確な動機ではなく、心の内から湧き上がる何ともいえない感情に突き動かされていることがまたリアルでした。 暴力団やゼネコンといった地域の名士が幅を利かせている田舎の描き方もリアリティがあります。私の好きな新宿鮫シリーズのⅣやⅦに似ているなと思いました。 一つだけ気になった点としては、読者が状況を把握できていない最初の数ページで、時間軸の動きを理解しにくい描写があったことです。(夕陽の記憶から実際の場面への転換)
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